第4話  恩情深い王様

 俺の知ってる『光の国より愛をこめて』は、王国の跡取り娘として厳しく育てられたアルデバランの王女が親の決めた結婚に反発して王都の町へ家出。

 そこで出会った靴磨きの青年とのラブストーリーのはずだ。

 王女の名前が思い出せないのは何故だろう。


「お父様、わたくしを助けてくださったレイ様ですわ、お父様からもお礼を言ってくださいまし」


 俺は、リリエラ姫と同じ金髪の、威厳がたっぷりの王の前に膝まずいた。


「レイ……姓はなんと言うのだ?」


「俺は、門田零です。かどは、もんて字を書きます」


 俺は、はっきり言ったよ!!

 なのに…………


「レイモンドで、姓無しか……」


 王は哀れんだ顔で俺を見てきた。


「魔族に村を襲われて、そなただけが生き残ったのか」


 勝手に決めつけられても……。


「そなたには、姫を救ってもらった恩がある。余からそなたに姓を授けよう」


「いえ、ですから俺の名前は門田零ですってば」


「お父様、レイモンド様はとても、強い魔法使いですのよ」


「そうか、東方の一族の名前をつけると神殿から文句が来そうだからな。我が一族の名前を一字入れて『バイル』と名乗るが良い。今日からそなたは、『レイモンド・バイル』だ」


 王は、満足そうに笑い、その場にいた臣下たちも手を叩いて王のセンスを褒め称えた。


(え!?)


 レイモンド・バイルは、この世界の伝説の勇者のはずだぞ? 

 俺は、大きく息をつく。

 どうしてこの世界にいるのかを考えないと、この世界の一員にされてしまいそうだ。 


「レスターを呼べ」


 王が言った。


 俺は、聞いたことのある名前に反応した。


 レスターって――――


『光国より愛をこめて』の中の、悪役だよなぁ?


 なのに、なんでアルデバランの王城にいる訳?


 しばらくして、見たこともない緑の髪を刈り上げの青年が現れた。


「王様、レスター・ウィレムでございます。お呼びですか?」


「フム、こちらのレイモンド・バイルを我が騎士隊に入れたいと思う。騎士隊長には、余から言っておくので、そなたは年も近いゆえに、仲良くして欲しいのだ」


「はい、仰せのままに」


 レスター・ウィレムってこんなに従順な人格だったかな?





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