そして朝になる
@harutsu
第1話
足が痺れる。三度寝したのに眠気が抜けず、晴子は目の前のクッションを見つめた。食べ過ぎたか、寝過ぎたか。はたまた食べ過ぎたか、寝過ぎたか…
そうして石像のように固まっていた後、はっとして背筋を伸ばした。手探りで眼鏡をかけて左を見る。庭の木は寝る前と同じ方向を向いて、太陽は同じように当たっている。時計だって回っているし、エアコンもちゃんと動いている。違うのは、部屋の電気が消えていて、母が家にいなくて、庭にまだ訪問者が来ていないことだけか。そこまで確認して、不意に晴子は恐ろしくなった。1秒後も、1分後も、1時間後、1日後、1週間、1ヶ月、1年、1世紀経っても、晴子だけがこの悠久の時に変わらずに居るような気がしたのだ。
硬い金属音が響き、木が軋む音がした。音を立てた主が近づいてくる。晴子は安堵して顔を上げた。
「おかえり!」
晴子の母は、ぎょっとした顔をして何も言わない。
再び、このまま悠久の時が続くような感が晴子を襲った。
そして朝になる @harutsu
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