終話 サクラ あなたに 遠まわり
「お客さん、・・・お客さん!」
店員の声で意識が戻る。1000円カットの順番待ちをしていた私は、椅子に座ったまま眠りこけてしまったらしい。どれくらい眠っていたのだろう。いや、精々、10分程度のはずだ。だけど、なんだかとても長い夢を見ていた気がする。
―サクラ あなたに 遠まわり
店内に流れるその曲は、女性ボーカルの切ない歌声とともにこの季節の情景を色鮮やかに喚起させる。
カットが終わり店を出る。街路樹の桜の木々はどれも満開で、ピンク色のトンネルを作っている。時折吹く風は、まだ少し冷たさを残している。私は頭上を見上げる。桜の向こうの空。どこまでも広がる青い空。
あれは夢じゃない。私はポケットに手を突っ込む。
なぜなら、ここに淡い黄色のハンドタオルがあるから。
必ず、君を見つける。だから・・信じて待っていて。
- 第1部 完-
もうひとつの物語1 ずっとくすぶっている人 @hirokawa0319
★で称える
この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。
カクヨムを、もっと楽しもう
カクヨムにユーザー登録すると、この小説を他の読者へ★やレビューでおすすめできます。気になる小説や作者の更新チェックに便利なフォロー機能もお試しください。
新規ユーザー登録(無料)簡単に登録できます
この小説のタグ
関連小説
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます