第3章「幸せのルール」
「『幸せ』っていったい、何なのだろう?」
そのことについて、女は、牢屋の中で、二十年もの間考え続けました。そして、更に、二十年考え続けても、その答えは、解りませんでした。気付くと、女は、随分と年老いていました。
或る寒い冬の朝。その日は、あの子供を殺めてしまった日と同じように、粉雪がヒラヒラと降り積もる寒い寒い朝でした。女は老いて痩せ細り、精神もかなり病んでいたので、自分が、寝ているのか起きているのかの区別さえつかない状態になっていました。朦朧とする意識の中、女が目にしたのは、あの日、女があやめてしまった子供の亡霊でした。
「お姉ちゃん、『幸せのルール』なんてないんだよ。どんな小さなことでも、自分が幸せだと思ったら、それが、本当の幸せなんだよ」
子供の亡霊は、そう言って消えてしまいました。
「ああ、そうか、そうだったのか……」
女は、四十年もの間考え続けてきた疑問の答えが解った瞬間、どっと、今迄の疲れが出てきました。そして、自分の手であやめてしまったあの子供のことを思い出し、申し訳ない気持ちで一杯になりました。そして、三十年間、牢屋の中で泣き続けました。
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