第2章「蒼い鳥……飛んだ」

 白い粉雪が「憐れみの森」を覆い尽くした或る寒い朝、森で遊んでいた子供たちが、「蒼い鳥」をみつけて、女の方に近付いて来ました。そして、その中の一人の子供が、鳥籠の扉を開けてしまいました。「蒼い鳥」は、解き放たれたかのように、空高く……高く、飛んで行ってしまい、あっという間に、女の視界から消え去ってしまいました。


「私の……私の幸せが……」


 全ての希望を一瞬にして失ってしまった、と理解した女は、絶望し、その子供の首を絞め、あやめてしまいました。


***


 女は、牢屋に入れられました。そこは、「憐れみの森」ほどには寒くない筈なのに、もっと、ずっと、寒く感じられました。そして、以前よりも、もっと、ずっと、深い孤独が女を襲いました。「蒼い鳥」を飼っていた籠のような、小さな小さな牢屋の中に入れられて、三ヶ月くらいが経過した頃、今まで、受け入れられずに封印していた思念が沸き上がってきました。


「幸せの『蒼い鳥』なんて、はじめから、存在しなかったんだ。幸せは、自分の力で掴むものなんだ……」


 そのことを確信した時、女は、受け入れなければならない厳しい現実を受け入れることが出来ずに、発狂しました。狂人のような一年余りを過ごした或る日、女は、フッと我に帰りました。


「『幸せ』っていったい、何なのだろう?」

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