第三十話「最終決戦」

「へぇ、なかなかやるじゃない」


 トトは、剣を向けられていても、気にしていない様子で言った。


 剣を向けられても、全然動じていない。今のところ、トトが直接戦っているところは見ていない。戦闘も自信あるのか?


 サトルは、一歩トトに近寄る。


「降伏するなら、今だぞ」


「あなたの実力が、私より上だったら、降伏するわ」


 戦闘は避けられないか。


 サトルは、トトに向かって走り出す。


「剣闘士行きなさい」


 トトの前に剣と盾を持った人物が、地面から這い上がって来た。


「今の俺は、スキルが発動中だ。こんなやつ簡単に倒せる!」


 サトルは、剣闘士を一撃で叩き斬った。


「やるじゃない。場所を変えようかしら」


 闘技場が、ガラスのように砕け散り、再び暗闇に包まれた。


「空間を構築させる前に倒す!」


 サトルは、空間が出来る前に倒そうと、足をさらに速めた。


「誰が、空間を構築するのに、時間がかかると言ったの?」


 トトは、見透かしているような目で、サトルを見る。


「まさか!」


 サトルの持っていた剣が、腕ごと暗闇に包まれた。


 なんか、やばい予感がする!


 サトルは、後ろに下がって、暗闇から手を引き抜いた。


「あら、惜しかったわね。もう数秒、大人しくしていれば、隻腕のダンジョン配信者になれたのに」


 サトルの持っていた剣は、朽ち果てて使い物にならなくなっていた。


 危なかった。いや、待てよ。そもそも、スキルが発動している気がしない。俺のユニークスキルは、自動で攻撃を避けてくれるはずだ。


「ふふ。気づいたみたいね」


 トトは、サトルの困惑した表情を見て、笑っていた。


「この空間自体に、何か効果があるのか?」


「この空間は、無の空間って呼ばれているのよ。いかなるスキルも、無になっているの。あなたは、生身と等しい力しか発揮できないわ」


 サトルは、後ろに下がっていく。


 生身の俺で、勝てるのか?


 サトルの内心は、不安に包まれた。


「サトル。諦めないで」


 後ろから、モモの声が聞こえた。


 サトルは、振り向いてみると、モモはサトルに向かって、手の平を向けていた。


「なんだ? 白い光に包まれている」


 サトルの体は、白い光に包まれた。


「これは、光のオーラよ。あらゆる負の効果を、打ち消す効果がある。ユニークスキルの効果も発動できるようになっているわ」


 モモは、両手を地面についた。


「モモ様! 大丈夫ですか!?」


 ミアは、モモの元にかけよる。


「大丈夫よ。魔力が底を尽きたみたい」


 モモ。残った魔力を、俺のために使ってくれたのか。


 サトルは、トトの方を見る。


「ユニークスキルの能力が戻ったからって、勝てると思っているの?」


「俺には、このスキルがあれば、女神にでも勝てる!」


 サトルは、トトに向かって走り出す。


「再び暗闇に包まれなさい」


 サトルは、体を左に傾けた。


「避けられた? 空間の色と同じだから、私と同じ女神でもない限り、避けることができないはずなのに」


 トトは、サトルが攻撃を避けたことに驚いた。


 俺の体が勝手に動く。スキルの能力が戻ってきている。


「ただ、運が良かっただけだわ。次は、避けることできないよ」


 攻撃がどこから来るかわからないでも、スキルがあれば、見えないのは関係ない!


 サトルは、波の流れに身を任せるように、体が動くまま暗闇の攻撃を避ける。


「偶然、避けられたという訳ではないみたいね。なら、これはどうかしら!」


 周囲の景色が暗闇から、黒い岩と赤いマグマが流れている場所に景色が変わった。


「ここは、火山口よ。マグマの波にのまれなさい!」


 マグマの波!? さすがに全体攻撃は、避けることは難しい。それに、このままだと、後ろにいるモモとミアも、攻撃に巻き込まれる。


『サトルさん! モモ様とミア様は、私の魔法で守ります。サトルさんにも、同じ魔法をかけますので、恐れずに進んでください!』


 サトルの脳内に、巫女さんの声が聞こえて来た。


「巫女さん。ありがとうございます!」


 サトルは、トトに向かって走り出す。


「脅しだと思っているの!? このまま焼き尽くされなさい!」


 マグマの波が、トトの後ろから現れた。


 マグマの波は、トトを避けるようにして、サトルの元にやってくる。


「俺には、マグマだって効かない!」


 サトルは、走りながらジャンプして、マグマの上を走り、トトの元に向かって行く。


「姉さんについている、あの巫女か! 私の邪魔ばっかりしてくる!」


 トトは、サトルに向けて、指をさした。


「ここは、私の空間よ!」


 サトルに向かって、マグマの槍が飛んで行く。


「効かない!」


 サトルは、その攻撃を、軽々と避けながら、トトに向かって進んで行く。


「あと、もう少しだ!」


 サトルの足が早まっていく。


「近づかないで!」


 マグマの槍が、サトルに向かって飛んでくる


「終わりだ!」


 サトルは、マグマの槍をジャンプして避けた。


「な!?」


 トトは、驚いた表情をする。


 サトルは、拳を振り上げて、トトの顔面を殴った。

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