第二十四話「再開」

「久しぶりだな」


 仮面を被った男が、サトルの方を見て話しかける。


「お前は、サーカスのダンジョンであったオペラ座の怪人か?」


『そうだよ』


 サトルの質問に、モモの妹であるトトが、音声のみで答える。


「どうして、ここにオペラ座の怪人がいるんだ?」


『私が、重傷を負っていたオペラ座の怪人を助けたの。仮面を剥ぎ取ったんですて? なかなか、すごいことをするじゃない。ふふ』


 トトは、笑いながら経緯を話した。


「トト様のおかげで、私は新たな仮面を手に入れ、お前達にリベンジを果たすことができる!」


 オペラ座の怪人は、サトルに剣を向けた。


「トト。助けたのは、悪人だってわかっているの?」


 モモは、冷たい声で、自分の妹であるトトに聞く。


『もちろんよ。私は、ダンジョン配信者に女神の力を使っている女神達が許せないの。お姉ちゃんを含めてね』


「しばらく、会っていない内に、女神のことを語るようになっているじゃない」


『私も、女神だからね。女神の力は、そんな一般人に軽く使わせては、いけないのよ。女神は、もっと神聖な立場であるべきなの。こんなに、人間と慣れ親しんでいたら、ちょっと変わった力を持った「人」だと思われるようになるわ』


「それが、あなたが動画配信者を狙って、悪人に襲撃させていた理由?」


『そうよ。女神の力を借りている動画投稿者は、痛めつけて、能力を持っていることを後悔させないと。私の目標は、動画配信者の根絶よ』


 モモの妹トトの目的は、女神の神格化なのか。


「トト様。俺は、モモ様から力を授かったサトルです。俺は、力を授かっていますが、モモ様のことを一度も下に見てはいません。なにより、力を授かったおかげで、以前よりも女神のことを神聖な存在だと認知しました」


 サトルは、女神トトに説得をして、争いを治めようとした。


『あなたの話は、聞いてないの。そんなに、言いたいことがあるなら、トップデッキまで来たら、話を聞いてあげる』


 説得は難しそうか。


「トト様。そろそろ、戦ってもよろしいでしょうか?」


 オペラ座の怪人が、剣を構えた。


『いいわ。二度と配信ができなくなるぐらい、痛めつけなさい』


 トトの声が聞こえ終わると、周囲の景色が真っ暗になった。


「なんだ!?」


 サトルは、驚いた声をあげて周囲を見る。


「落ち着いて、空間魔法よ。トトが、私達を別空間に飛ばしたの。おそらく、メインデッキが戦場になると、自分の神殿である東京タワーに被害が出るから、場所を移動させたのね」


 しばらくすると、周囲が明るくなっていく。




「ここは……、劇場?」


 数百人の観客が入る事が出来るであろう、巨大な劇場の舞台上に、サトル達は立っていた。


「ここは、ガルニエ宮。オペラ座とも呼ばれている場所です」


 オペラ座の怪人は、改まった態度で、サトル達に頭を下げる。


「オペラ座。あなたが生まれた場所ね」


 モモは、オペラ座の怪人の方を見て言う。


「トト様にお願いをして、私の実力をフルに出せる舞台を、空間魔法で再現させて、いただきました」


 オペラ座の怪人は、自分の持っている剣を撫でる。


「さっさと蹴りつける! ファイアーボール!」


 ミアは、オペラ座の怪人に向けて、魔法を放った。


「闘争心が強い女性だ」


 オペラ座の怪人は、自分のマントで体を隠すようにして、ミアの魔法を受ける。


 オペラ座の怪人が立っていた場所は、煙に包まれた。


「当たったわ。そんな、余裕をこいているからよ」


 ミアは、オペラ座の怪人が立っていた場所に杖を向けた。


「無駄です。ここは、オペラ座。私の力が最大限に生かされる場所だと」


 煙の中から、オペラ座の怪人は、何事もなかったようにして現れた。


「当たったのに、効いてない?」


 ミアは、驚いたような声を出した。


「次は、私の番です」


 オペラ座の怪人が両手を上げる。


 サトル達が立っている舞台に光が当てられた。


「くっ、視界が……」


 サトルは、目がくらみそうになり、手で目元に影を作った。


「サトル。オペラ座の怪人は、どこに行ったの?」


 ミアが、周囲を見渡しながら言う。


 オペラ座の怪人が立っていた場所を見ると、オペラ座の怪人の姿がどこにもなかった。


「どこ行った?」


 サトルも周囲を見渡す。


「サトル、ミア上よ!」


 モモが上を見ながら、サトルとミアに言った。


 サトルとミアは、上を見上げると、オペラ座の怪人が宙を歩いているのに、気づいた。


「宙を歩いているだと?」


 一体どんな原理なんだ?


「言ったでしょう。ここは、私の力が最大限に引き出される場所。こういうトリッキーな仕掛けも用意されている」


 オペラ座の怪人は、剣をサトルに向ける。


「まずは、私の仮面を剥がした。サトル。あなたから、死んでもらいます!」


 宙を浮いていたオペラ座の怪人は、落下してきてサトルに向かって剣を振り下ろした。


「くっ!」


 サトルは、当たる直前でかろうじて避ける。


「さすが、私から仮面を引き剥がした男だ。だが、攻撃は、これで終わりじゃない!」


 オペラ座の怪人は、サトルのことを追撃していく。


「ちょっと、私のこと忘れていない?」


 サトルとオペラ座の怪人が戦っている中、モモの声が劇場内に響く。


「ぬっ!?」


 オペラ座の怪人が、サトルの前から遠ざかっていく。


「体が勝手に動いて、後ろに引き寄せられ……」


 オペラ座の怪人は、最後まで言葉を言いきる前に、壁まで吹き飛ばされた。


「サトル。私に作戦があるわ」


 モモは、サトルの隣に立って、オペラ座の怪人が吹き飛ばされた方向を見ていた。

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