第二十二話「黒幕が住む場所」

「モモ様、なんでここに?」


 ミアが、モモの所に駆け寄る。


「配信を見ていたからね。終わるタイミングを見計らって、ここで待っていたのよ」


 淡々と話すモモ。サトルは、モモの話の内容よりも服装に目が入った。


「モモ。なんで、警察官の服装をしているんだ?」


 モモは、神殿にいる時は白いロープを着ている。しかし、今のモモは薄い青色のワイシャツに、黒いズボン、警察の帽子を被っていた。変わってないのは、桃色の髪ぐらいだ。


「逮捕しちゃうぞ♡」


 モモは、片足を軽く上げて、サトルに向かって、手錠を前に出した。


 か、可愛い。だが、ここで声をあげたら負けな気がする。モモが、さらに調子を乗る未来が見えている。


「何か、リアクションは?」


 モモの顔が、サトルの顔に近づいて来る。


「何しに来たのか、教えてくれないか?」


 サトルは、モモの話をスルーすることにした。


「えー、気合い入れてコスプレしてきたのに……まぁいいわ。私は、そこで縄に縛られている男に用があるの」


 モモは、投稿者潰しのリーダーの元に近寄る。


「けけけ。あんたが、こいつらの女神か」


 リーダーは、女神を前にしても口調を変えなかった。


「そうよ。随分と、私の動画投稿者をいじめてくれたじゃない」


「けけ。俺に何のようだ?」


「あなたの裏で、繋がっている女神を探りに来たわ」


 モモは、リーダーに向けて、手の平をかざした。


「な、なにするつもりだ?」


「あなたの記憶を、貰うわね。安心して、あなたと繋がりがある女神の記憶を貰うから」


 モモの手の平が、光り始めた。


「や、やめろ!」


「大丈夫よ。痛くないよ。でも、記憶を抜かれた副作用で、眠っちゃうけどね」


 モモの手の平で、光っている明かりが強くなっていく。


 リーダーは、顔を地面につけて、動かなくなった。


 モモは、黙ってリーダーに向かって、手の平をかざし続ける。


 光が無くなると、モモは立ち上り、サトルとミアが立っている方向を向く。


「ふー、裏で繋がっている女神がわかったわ」


 モモは、さっきの笑顔と逆に、神妙な顔つきをしていた。


「やっぱり、他の女神が加担していたんですか?」


「ええ、そうよ」


「一体どんな女神が……」


「急だけど、今から、その女神の所に行くわ」


 モモは、忍者屋敷の出口に向かって歩き出す。


「え、今から!?」


 ミアは、驚いた声を出した。


 ミアが、驚くのもわかる。いくらなんでも、急すぎる。


「あっちの女神も、何かしらの手段で、そこで寝ている男と連絡を取っていたと思うわ。女神の方が、連絡が取れないってなると、逃げる確率が高い。そうなったら、女神である私でも、追跡するのは難しいのよ。今なら、その女神の居場所がわかる。行くなら、今しかないの」


 モモは、投稿者潰しを行わせている女神を許さないつもりだ。逃げ出す前に、決着をつけるつもりなのだろう。


「モモ。俺も行く」


 サトルは、モモの後について行った。


「わ、私も!」


 ミアも、サトルとモモの後を追っていった。


「ありがとう。後で、私からも報酬を出すわ」


 モモは、サトルとミアに笑顔を向けた。


 忍者屋敷を出ると、モモの付き人である巫女さんがいた。


「モモ様、転移魔法の準備はできています」


 巫女さんの足元には大きな魔法陣が描かれている。


「モモ様これは?」


「複数人まとめて、転移できる魔法陣よ。魔法陣の上に乗れば、基本どこでも転移ができるわ」


 モモは、魔法陣の上に乗る。


 サトルとミアも、魔法陣の上に乗った。


「モモ様。ご武運を」


 巫女さんは、魔法陣の外で、モモに頭を下げる。


「巫女さんは、一緒に来ないのですか?」


 ミアは、不思議そうな顔で、巫女さんに聞く。


「はい。私は、今回遠隔でモモ様のサポートをさせていただきます。相手は女神、現地でサポートをすると、確実に私から狙ってくるでしょう。そうなると、モモ様は私を守りながら、戦わなければなりません」


 巫女さんは、モモを戦いに集中させたくて、遠隔からのサポートにするのか。本当は、一緒について行きたかったのかもしれない。


「サポートを頼んだわよ。遠隔でも、私にバフをかけることができるのは、あなたしかいないんだから」


「はい。任せてください」


 巫女さんは、モモに頭を下げた。


 モモ達の足元にある魔法陣が光出す。


「よし、黒幕を倒しに行くよ」


 モモの声が聞こえたのと同時に、視界が真っ白になった。




 視界が晴れていくと、俺の前に真っ赤な鉄骨が見えた。


 大きな鉄骨だ。それに、なんて赤さをしている。


 サトルは、いくつもの赤い鉄骨が上に伸びているのに気づいて、上を向いて行く。

 真っ赤な鉄骨と、白色のラインが色づけられている。中間には、展望台らしきものが見えた。


「ん? この建物どこかで……」


 サトルは、この鉄骨は塔であることに気づき、既視感を覚えた。


 絶対に、どこかで見たことがある塔だ。


「モモ様、この塔って、もしかして」


 後ろから、ミアの声が聞こえた。


 振り向くと、ミアとモモが立っているのを見つけた。


「えぇ、ここは東京タワーよ」


 サトルは、モモの声を聞いて、前を向いた。


「まさか、投稿者潰しの黒幕がいる所って、東京タワー?」


 サトルは、東京タワーを見上げた。

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