第二十一話「リーダーとの決戦」

『スキル:リスナー選択権が発動されました』


 リーダーが、サトルに刃先を向けた瞬間、スキルが発動する。


 このタイミングで、スキルの発動はでかい!



 :きたきたー!

 :いいとこで、スキルが発動するんだから

 :本当ねー!



 リスナーは、盛り上がりをコメントで表していた。


『リスナーの皆さん。これから上げる二択のどちらかを選択して下さい』



 一:敵を殺さずに倒す

 二:ダンジョンコアを破壊して、ダンジョンから脱出する



 サトルは、リスナー選択権で、提示された選択肢を確認した。


 これは、「一:敵を殺さずに倒す」しかない。


『リスナーの投票が終わりました。投票結果は、「一:敵を殺さずに倒す」に決まりました』


 サトルの予想通り、「一:敵を殺さずに倒す」に決まる。


「けけけ。攻めて来ないなら、俺から行かせてもらうぜい」


 リーダーが、サトルに向かって走り始めた。


 サトルは、剣を抜いて構える。


「死んでも、恨むなよぉ!」


 リーダーが、サトルに向かって、右手に持っているラチェットを振り下ろした。


「やられるか!」


 サトルは、振り下ろされたラチェットを、剣で弾き返す。


 今は、リスナー選択権のおかげで、どんな攻撃でも対応できるようになっている。その間に、リーダーを倒す!


「なに!?」


 リーダーは、ラチェットが弾かれたことに驚く。


 サトルは、握っている剣で、突きを放った。


「けけけ」


 リーダーは、空いていた左手を使って、魔法陣が描かれていた紙を取り出す。


「魔法紙!」


 リーダーが持っている魔法紙から、現れたのは金属製の盾だった。


 サトルの突きは、盾によって止められた。


「けけけ。鋼鉄の盾だぁ」


「まだまだ!」


 サトルとリーダーは、一進一退の攻防を繰り広げる。


「けけけ。なかなかやるな」


 リーダーは、笑みを浮かべながら、ラチェットを振り下ろす。


 剣よりも薄くて、刀身が短いのに、一撃一撃が重い。スキルが発動していなかったら、負けていたかもしれない。


 サトルは、振り下ろしされたラチェットを押し返し、リーダーに向かって斬りつける。


「おっと」


 リーダーは、サトルからの攻撃を避け、少し体勢が崩れる。


「隙あり! ファイアーボール!」


 戦いの様子を見ていたミアは、リーダーの体勢が崩れたのを狙って、魔法を放つ。


「不意打ちはだめだよぉ」


 リーダーは、左手に装備していた盾で、ミアの魔法を防いだ。


「まだまだ!」


 ミアは、もう一度ファイアーボールを放った。


「けけけ。だから効かないって」


「よそ見しているぞ」


「げっ!?」


 サトルは、ミアが作り出してくれたチャンスを見逃さなかった。



 :いけぇ!

 :やれぇ!

 :たおせぇ!



 サトルの配信を見ているリスナーも盛り上がりを見せる。


 よそ見をしていたリーダーは、慌ててサトルの攻撃を防ごうとした。


 リーダーの防御は、間に合わず、サトルの剣による攻撃を受けた。




「倒したの?」


 ミアは、サトルの元に来て、倒れているリーダーを見る。


「手応えはあった」


 リスナーが選んだ選択肢は、「一:敵を殺さずに倒す」だ。死んではいないと思うが、様子を見る限り戦闘の続行は不可能と見て良いだろう。


「ダンジョンボスも動かないね」


 ミアが見ている視線の先には、リーダーによってやられたロボットが倒れている。


 敵は、強かった。スキルがなかったら、俺が倒れていただろう。


「ダンジョンコアを壊すか」


 サトルは、倒れているロボットに近づいて、胸部にあるダンジョンコアに向かって、剣を突き刺した。


 サトルとミアは、白い膜みたいのに覆われる。


「転送が始まった」


 ダンジョン攻略が完了した。


 サトルは、転送されるまでの間、コメント欄を見る。




 :ダンジョン攻略おめでとう!

 :面白かった!




 俺の配信を見ているリスナーは、満足しているみたいだ。


 白い膜が、どんどん濃くなり外の景色が見えなくなった。




 外の景色が見えるようになると、そこは忍者屋敷の中だった。


 ダンジョンがあった階段の方を見ると、何も無くなっている。


「疲れたー」


 ミアが、床に座り込んで言う。


「俺も疲れたな」


 いつも相手している魔物だけじゃなくて、対人戦もした。慣れない相手と戦うと、こんなに疲れるとは思わなかった。


「とりあえず、依頼の達成を半蔵さんに教えよう」


 他にも、やることはあるかもしれないけど、何も考えられない。


 サトルは、忍者屋敷に入って会った、忍者である半蔵を探そうとした。


「くくく」


 突然聞こえた笑い声にサトルは、振り向いた。


「まだ、動けるのか!?」


 サトルの前には、投稿者潰しのリーダーが立っていた。


 俺のスキルで、『敵を殺さずに倒す』を選択して命に別状はないとしていても、剣で斬られた傷が痛々しい。


「久々に斬られたよ。いつぶりだろぉな」


 サトルは、斬られているのにも関わらず笑っているリーダーを見て、背筋が凍るような感覚を感じた。


「動くと怪我が悪化するぞ」


 サトルは、剣を構えて、リーダーに忠告をする。


「くくく。怪我が怖くて、戦いなんてできないだろお」


 リーダーは、魔法陣が描かれている魔法紙を取り出す。


「武器も、まだあるしなぁ」


 魔法紙が光出して消える。光が無くなると、手にはナイフが握られていた。


「サトル」


 ミアは、サトルの元に近づこうとする。


「加勢は大丈夫。俺だけで、やれる」


 剣を握っている手に、力が入るのを感じた。


「第二戦目だぁ!」


 リーダーは、ナイフを振り上げて、サトルに向かって走り出す。


「そこまでよ」


 女性の声が聞こえた瞬間、俺の所まで走って来ていたリーダーが、突然現れた縄に縛られて、地面に倒れた。


「な、なんだぁ!?」


 リーダーは、縄から解放されようと、暴れる。


 サトルは、リーダーが動けないのを見て、声が聞こえた方向を向いた。


「ダンジョン攻略おめでとー」


 そこにいたのは、女神であるモモだった。

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