第二十話「取り巻きとの戦い」

 スキルの発動が来た!



 :やったー! 選択できる!

 :この展開で、このスキルは熱い

 :どんな選択が来るんだ!?



 俺の配信を見ているリスナーは、『スキル:リスナー選択権』の発動を聞いて、盛り上がっている。


『リスナーの皆さん。これから上げる二択のどちらかを選択して下さい』



 一:取り巻きを剣で倒す

 二:取り巻きを素手で倒す



 意外とシンプルな選択肢だ。



 :まぁ、最初はこんな感じか

 :まずは肩慣らしね

 :準備運動は大切っと



「リスナー、そのコメント嫌な予感しかしないんだが?」


 この先、えぐい選択肢が出たら、俺のリスナーは喜々として、その選択肢を選びそうな気がする。


『リスナーの投票が終わりました。投票結果は「二:取り巻きを素手で倒す」に決まりました』


 できれば、剣で戦いたかったが、リスナーのコメントから見るに、素手で戦うことは覚悟していたよ。


 サトルは、構えていた剣を腰に差している鞘に戻す。


「何、剣をしまっているんだー?」


「お家に帰りたくなったー?」


 取り巻き二人は、その様子を見て、あざ笑うかのように言う。


「お前達、俺と戦うことになったのを後悔するぞ」


 サトルは、そう言うと、取り巻き二人に向かって走り出す。


「兄ちゃん。正面から来るよぉ」


「バカだねぇ」


 前歯がない取り巻きの一人は、小さな竹筒を取り出した。


「ロボット相手には、使えなかったけど、人間には聞くよぉ。吹き矢のプレゼント!」


 前歯のない取り巻きは、サトルに向かって吹き矢を飛ばす。


「見えた!」


 サトルは、竹筒から飛ばされた吹き矢を、片手でキャッチする。針は手に刺さらず、無傷でキャッチできた。


「は!? 吹き矢は、暗殺にも使われる最強の武器だぞぉ!?」


「兄ちゃん。あいつ、見えたって言っていたよ!?」


 取り巻きは、サトルが吹き矢をキャッチしたことに驚いている。


 見えたって言ったが、本当は見えていない。なんなら、内心死んだかと思ったよ。


 サトルの行動は、『スキル:リスナー選択権』により、行動が自動化されていた。その効果により、取り巻きによる攻撃は、サトルの意志関係なく処理される。


「吹き矢がダメなら、これはどうだ!?」


 取り巻きは、手の平ぐらいの大きさである丸い玉をサトルに向かって投げた。


「兄弟特製の毒針爆弾だ! この爆弾で数多くの動画投稿者を倒してきた! 二週間は、悪夢でうなされるぞぉ!」


 スキル発動前の俺なら、やられていたかもしれない。だが、今はスキル発動中だ。どんな攻撃が来ても対処できる。


 サトルは、鞘に納めた剣を鞘ごと抜いた。


「持ち主の所に帰って来い!」


 サトルは、鞘に納めた剣をバッドみたいにかまえ、毒針が仕込まれた爆弾を取り巻きの所まで、打ち返した。


「ほへぇ!?」


「兄ちゃん! これはやば!?」


 爆発音と共に、取り巻き二人は爆発で発生した砂煙に巻き込まれた。



「に、兄ちゃん……」


 砂煙が晴れると、取り巻きの一人は、地面に倒れて痙攣している。


「足が動かない……」


 前歯がない取り巻きは、立っているものの、かろうじて意識を保っているように見えるほど、衰弱した状態だった。


 サトルは、立っている取り巻きに近づいて行く。


「こ、降参だ……」


 サトルは、腕回しを始めた。


「見ろ、弟は立つこともできなくて、俺は喋る事でやっとだぞ」


「最初に、毒を使った攻撃をしてきたのは、お前達だ」


 サトルは、前歯がない取り巻きの前に立った。


「それが、勝負ってもんだろ? 綺麗な戦いなんて、存在しないんだ!」


「勝負を汚くさせたのは、お前だ」


 サトルは、拳を後ろに引いて、パンチの構えをとる。


「ひっ、ひぃぃぃぃぃぃ!?」


「起きたら、牢獄だ」


 サトルは、前歯の無い取り巻きに、強力な顔面パンチを炸裂させた。


 前歯のない取り巻きは、声を出す事もなく、地面に倒れて、気絶した。


「ふぅ」


 サトルは、一息つきコメント欄を見る。



 :かっこいい!

 :爆弾を打ち返したの、漫画みたいだ

 :俺、素振りしてくるわ! ノシ



 コメント欄は、サトルの活躍を見て盛り上がっていた。


 ほとんど、ユニークスキルのおかげなんだけどな。


「くくく。さすが、強力なユニークスキル持ちの動画投稿者だ」


 サトルは声がした方向を見ると、マチェットを片手に持って歩いて来るリーダーの姿が見えた。


 ダンジョンボスを倒してきたのか?


 サトルは、剣を抜いて構える。


「お前の仲間は、もういないぞ!」


「くくく。仲間に頼らなくても、俺は、お前に勝てるよ」


 リーダーは、笑みを浮かべながら近づいて来る。


「テキハッケン!」


 リーダーの後ろに、巨大な影が現れる。


「まだ、動けるのか。頑丈だな」


 巨大な影の正体は、このダンジョンのボスである木製のロボットだった。


 しばらく、見ていない間に、随分ボロボロになっている。あいつがやったのか?


「くくく。再起不能になっても、文句は言うなよぉ?」


「シンニュウシャタオス」


 ロボットが、拳を大きく振り上げ、リーダーに向かって、振り下ろした。


「くくく。図体が大きすぎるのが、弱点だったな」


 リーダーは、ロボットの振り下ろした拳を避け、マチェットによる連撃で。ロボットを斬っていく。


「キケン」


 ロボットは、その言葉を最後に地面へ倒れた。


「くくく。次は、お前達だ」


 リーダーは、サトルとミアに向けて、マチェットの刃先を指して、宣言した。


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