第十九話「三つ巴の戦い」

「シンニュウシャ、ゲイゲキ」


 ロボットの前を、リーダーと取り巻きが通ろうとした。ロボットは、三人の動きを妨害しようと動き出す。


「お前等、頼んだぞ!」


「へい」


 取り巻き二人が、ダンジョンのボスであるロボットに向かって走り出す。


「あいつ、一人でこっちに来るつもりか」


 サトルは、リーダーに向かって走り出し、剣を振り下ろす。


「けけけ。さすが、ダンジョン配信を一年間続けているだけある。太刀筋は悪くない」


 リーダーは、サトルが振り下ろしてきた剣をナイフ一本で受け止めた。


 そのナイフ、耐久性どうなっているんだよ。


「このまま押し斬られろ」


 サトルは、攻撃を受け止められたことに動揺したが、振り下ろした剣に体重をかけていく。


「けけけ。やだよ」


 リーダーは、サトルの腹部に蹴りを入れた。


「ぐっ!?」


 サトルは、後ろによろけ体勢を崩す。


「がら空きだぁ!」


 リーダーは、サトルに向かって、ナイフを突き刺そうとした。


「思い通りにさせないわ」


 ミアが、リーダーに杖を向ける。


「ファイアーアロー!」


 杖の先端から火の矢が、複数生成され、リーダーに向かって飛んで行く。


「おっと」


 リーダーは、ナイフを使い、飛んでくる火の矢をさばく。


 サトルは、その間に崩れた体勢を直し、剣を構えた。


「ミア。助かった」


「お礼を言うのは、あいつを倒してからだよ」


 リーダーの方に視線を向けると、リーダーは持っているナイフを捨てていた。


「けけけ。さすがに、魔法を受けると使い物にならなくなるな。ボロボロだ」


 ミアの魔法は、ミア自身のユニークスキル『不運の馬鹿力』で、威力が底上げされている。ナイフぐらいなら、ボロボロにさせることができるのか。


「けけ。久々に使うか」


 リーダーは、魔法陣が描かれている紙を取り出した。


「魔法紙か、何をするつもりだ?」


 サトルは、身構えた。


「けけけ。知っているか? 魔法紙から放たれる魔法は、魔法使いが放つ魔法より威力が低い。上の階層で、お前が使った魔法をくらっても、俺達には、そんな大したダメージにならなかった」


 リーダーは、笑いながら、サトルに向かって言う。


「俺を挑発しているつもりか?」


「魔法紙の使い方で正しいのは、収納だ。これだと、魔法使いの魔法の質と対して変わらない」


 リーダーの手に持っている魔法紙が光出した。


「なんだ? そのナイフは?」


 リーダーの手には、普通のナイフより数倍長いナイフが握られていた。


「くくく。これは、マチェットと呼ばれるやつだ。山刀とも呼ばれている」


「ナイフが大きくなったって関係ないわ。ファイアーアロ―!」


 ミアの杖から、再び複数の火の矢が放たれる。


「マチェットには、使用者の肉体的負担が少なくなるように作られている特徴があるだなぁ」


 リーダーは、ミアの魔法である、ファイアーアロ―を素早く撃ち落とした。


「通常マチェットなら、耐久性に疑問点がある。しかし、俺のマチェットは耐久性を上げるため、ダンジョンでしか取れない特殊な鉱石を使って製造している。魔法でも刃こぼれしない。くくく」


 リーダーは、マチェットの刀身を撫でるように触った。


「サトル。あいつ、自分の武器を説明するほど、余裕があるみたいよ」


「あぁ。相当自信があるみたいだな。次は、俺から行く」


 サトルは、剣を構えながら、リーダーに向かって走る。


 さっきは、ナイフで受け止められたことに驚いたが、次は冷静に対処する。


「くくく。やる気みたいだな」


 余裕な表情を浮かべているリーダーに向かって、サトルは剣を振り下ろした。


 リーダーは、振り下ろされた剣を受け流し、サトルに突きを放った。


「当たるか!」


 サトルは、リーダーによる突きを避けて、距離をとる。周囲を見ようとした時、コメント欄に目が入った。



 :すげぇ

 :やるぅ!

 :ワクワクさせんじゃん!



 サトルの配信を見ているリスナーは、リーダーとサトルの戦いを見て盛り上がっていた。


 あいつと鉢合わせた時から、コメント欄を見る余裕がなかった。盛り上がっていて、良かった。


 サトルは、同接を確認してみると、千人の数字が目に入った。


「千人も見てくれているのか」


 サトルは、呼吸を落ち着かせ、剣を構えた。


「配信を見てくれている、リスナーのためにも頑張らないとだな」


「リスナーと一緒に、絶望に落としてやるよ。くくく」


 リーダーは、不気味な笑みを浮かべて、近づいて行く。


「リ、リーダー! 危ない!」


「ん?」


 サトルと、リーダーは、声がした方向を向くと、ロボットがリーダーに向けて、パンチを繰り出そうとしていた。


「キケン、キケン」


 ロボットのパンチをリーダーは、持っていたマチェットで受け流した。


「おい、お前等。ちゃんと、ボスの気を引いていろよ!」


「リーダーが、マチェットを出した途端! あいつ俺達のことを無視して、リーダーの方向に向かって走り出しましたぜ!」


「俺が、マチェットを取り出したら?」


 リーダーは、自分の手に握られているマチェットを確認してみる。


「キケン、キケン」


 ロボットは、両手を重ねて大きく上に振りかぶる。


「くくく。武器の危険性を見て、俺に標的を変えたのか。お前等は、ダンジョン配信者の方を倒せ! 俺がボスを相手する」


「へい!」


 サトルの前に、リーダーの取り巻きが、二人現れた。


「けけ。お前の相手は、俺達だ」


「へへ。俺達二人、実は兄弟!」


 取り巻き二人は、剣を取り出す。


「サトル」


「あぁ、こいつらを先に倒して、リーダー、その次にダンジョンボスだ」


 サトルは、剣を構える。


『スキル:リスナー選択権が発動されました』


 サトルの脳内に、スキルの発動を知らせるアナウンスが響き渡った。



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