第十五話「リンゴの間」

「ここが、リンゴの間」


 部屋の中に入ると、リンゴの甘い匂いが漂ってきた。


「水、水―!」


 ミアは、必死に部屋の中を捜索して、水となる物を探していた。


「リンゴの間って、ことはリンゴがあるのか? まずは、試練が何かを調べよう」


 サトルは、試練の内容を知るために、リンゴの間を捜索する。


「ん? 今度は机の上に何かがある」


 サトルは、机の上に置かれている手紙を見つけた。


「水!?」


 ミアが、サトルより速く手紙に飛びついた。


 ミアは、手紙を見て静止している。


「ミア。なんて書いてあった?」


 ミアは、黙ったまま手紙をサトルに渡す。サトルは、その手紙を開いて見てみる。


『リンゴは、いつから日本に存在していたでしょう? 手紙に付いている解答用紙を、机の下にある箱に記入して入れて下さい。正解者には、リンゴジュースをプレゼント!』


「サトル。絶対に当ててね。リンゴジュースを、早く飲みたい」


 ミアは、サトルの目を見ながら話した。


 絶対に正解しろっていう信念を感じる。


「わかった。任せてくれ」


 サトルは、手紙に付いていた選択肢がある解答用紙を手に取り、机の下にある箱を机の上に置いた。


「箱にペンが備え付けられている。このペンで、書けってことか」


 サトルは、箱に付いているペンを手に取る。


「リンゴが、いつからあるかか」


 サトルは、解答用紙に確認する。



 一:平安

 二:戦国

 三:明治



 三択になっている。


『スキル:リスナー選択権が発動されました』


 俺のスキルが発動した。そうだ。俺の配信を見ているリスナー六百人の知恵があれば、この問題は突破できる!


「リスナー! 力を貸してくれ!」


 サトルは、リスナーに力を貸してくれるよう、頼んだ。



 :んー

 :どうしよう



 リスナーは、あんまり協力的なコメントが見当たらなかった。


 今まで、俺はトラップに引っかかっていない。リスナーは、配信を見ていてつまらなく感じているのか。


「サトル」


 サトルが悩んでいると、ミアに肩を叩かれる。


「ミア、どうした?」


「今、サトルのユニークスキルが発動しているのよね」


「あ、あぁ。発動している」


「まだ、投票終わってないんだよね?」


「終わってない」


 ミアの言葉からは、圧を感じた。それに、目が本気だ。


「サトルの配信を見ているリスナー」


 ミアは、サトルの頬に手を添えて、サトルの瞳を見つめる。


 な、なにをするつもりだ。


「正解を選んでくれる?」


 ミアは、今まで、見たことない、甘えるような表情をし、配信を見ているリスナーに、甘えた声で言った。


 それは、ちょっと俺のリスナーには刺激が強すぎるんじゃないか? てか、俺も鼓動がやばすぎる。


 サトルは、自分の配信を見ている、リスナーのコメント欄を見てみた。



 :絶対に正解を選びます!

 :ミア様の言うことはー

 :ぜったーい!



 俺の配信を見ている、六百人のリスナーは、ミアの甘えた表情と声に落とされた。


『リスナーの投票が終わりました。投票結果は、一:平安になりました』


 サトルは、解答用紙に書いてある、「一:平安」に丸を付けて、箱に入れた。


「正解!」


 部屋の中に機械音声の音が聞こえると、箱が開いた。


 サトルは、箱の中を見てみると、入れたはずの投票用紙は消えて、コップ一杯分のリンゴジュースが、置いてあった。


「水分!」


 ミアは、速攻で中にあるリンゴジュースを手に取り、飲み始める。


「酸っぱさは消えたか?」


 サトルは、リンゴジュースを勢いよく飲む、ミアのことを眺めながら言う。


「ばっちり。ふふふ、魔眼の力さえあれば、酸っぱさなど敵ではないわ!」


 ミアは、生き生きとした表情で言った。


 いつもの調子に戻ったミアを見て、サトルは周囲を見渡す。


「さて、次はどっちに向かおうか」


 サトルは、障子に書かれている文字を探してみる。


「サクラの間、ツバキの間、無の間」


 無の間か……、今まで見た部屋の名前とは違う名前だ。


「ミア。無の間について、どう思う?」


「魔眼の力には反応しない。安全なはず」


 ミアが、安全と言うのは少し危険な気がするが、階段に近づくためには、いろんな部屋を訪れないと辿り着けない気がする。


「行ってみるか」


 サトルは、無の間に続く扉に手をかけて、中に入った。



「名前の通り何もない」


 無の間には、畳が敷かれ、座布団が二枚置かれているだけだった。


「サトル。座布団の前に、手紙が置かれている」


 ミアが、座布団の前に置かれていた手紙を拾い、サトルに渡した。


「なにが、書いている?」


 サトルは、手紙を開いてみる。


『無の間にようこそ! ここは、休憩ポイントだよ。十分休んだら、次の部屋に進めるようになるよ』


 ここは、休憩ポイントなのか。


 サトルは、手紙を広げて、ミアに見せる。


「休憩ね。魔眼の力を貯めよう」


 サトルとミアは、座布団に座り時間を過ぎるのを待った。



「もうすぐで、十分」


 座布団に座っていたミアが、独り言のように呟く。


「十分経つか。ん? どうやって、時間を計ったんだ?」


「配信時間」


「あぁ、その手があったか。頭良いな」


 サトルは、立ち上がり体を伸ばした。


「よし、そろそろ、次の部屋に進もう」


 サトルは、障子に書かれている文字を調べ始める。


「次は、タンポポの間と」


「リーダー。次は、どっちに進みましょう?」


 サトルとミア以外の声が聞こえた。



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