第三話「女神=胸が、俺の脳内思考」

「私のおっぱいを、ブラつけていない状態で揉む……」


 モモは、自分の胸を腕組んで隠した。


「女神の胸を揉むって、何を言っているんですか!?」


 巫女が、サトルに詰め寄る。


「巫女さんは、モモ様の、おっぱいを揉んだことは、あるのですか!?」


 サトルは、逆に巫女へ詰め寄った。


 願望を言ってしまったなら、勢いで乗り切るしかない。


「わ、私はないです」


 巫女は、サトルの反応に驚き後ずさりをした。


「モモ様のおっぱい! 触り心地が良さそうだと思いませんか!」


 サトルは、モモの胸に向けて指を指した。


 巫女は、モモの胸を見る。


「良さそうです」


「ちょっと! なんで、言いくるめられているのよ!」


 モモは、顔を赤らませて、胸を見せないように体を横に向けながら言う。


「巫女さん。女神のおっぱいを揉むのは、神罰に値しますか?」


「いえ、そもそも胸を揉もうとした人がいないので、禁止のルールがありません」


「なら、おっぱいを揉んでも良いでしょう」


「良いです」


 巫女は、即答した。


「ダメに決まっているでしょー!」


 サトルは、モモの方を向く。


「モモ様」


「ひっ!」


 モモは、軽く悲鳴をあげた。


 話しかけただけで悲鳴をあげられると、流石に傷つくな。だけど、これは許容範囲内、ブラをしていない胸を揉めるなら、これぐらいはかすり傷だ。


「女神は、人々に希望を与える存在だと思うのですが、間違っていますか?」


「い、いえ。間違っていないわ。私が女神であり続けている理由は、人間に幸せを与えるためですもの」


 モモは、強い意志を感じるような眼差しで、サトルのことを見る。


「なら、報酬でおっぱいを揉ませるのも、人間に希望を与えるのと一緒だとは思いませんか?」


「そ、それは、暴論よ!」


「暴論って言葉、俺の目を見て、もう一度言えますか?」


「もう一度、言える訳……」


 モモは、途中まで言って黙り込んでしまう。


「わ、わかったわ」


 モモは、サトルの目を見て返事をする。


「チャンネル登録者数、百万人突破したら、私の胸を揉ませてあげる」


 モモは赤面しながら、恥ずかしそうな仕草をしながら、サトルに言った。


 ききき、来たー! ついにもぎ取ったぞ、最高の報酬を承諾させた!


「ありがとうございます」


 サトルは、内心飛び跳ねるぐらい喜んでいるが、返事はスマートに返した。


 これで俺の夢に、女神モモのおっぱいを、ブラしていない状態で揉むが追加されたぞ。


「いきなり、紳士みたいな返事をされると、なんかむかつく」


 モモは、サトルの返事を聞いて、不満げな顔をした。


「でも、私の胸を報酬に出させたから、しっかりと頑張ってもらうからね」


 モモは、サトルに向けて右手の平を向けると、サトルの足元に魔法陣を発生させた。


「こ、これは!?」


「慌てないで、転移魔法よ。今回だけ特別に、サーカスのダンジョンがある場所まで、転移させてあげるわ」


 サトルは、再び光に包まれていく。


 モモ様と巫女さんの姿が見えなくなった。


「一応、言っとくけど、ダンジョンは命を落とす危険があるから、報酬に浮かれて死なないようにね」


 モモ様の声だけが聞こえる。そして、白い光が晴れて現れた光景は、紫色の巨大なテントが設営されている、サーカス会場だった。





「ここが、噂のサーカスダンジョン」


 サトルは、ポケットに入っていた魔法陣が書かれている紙を取り出す。


「ツール」


 魔法陣が書かれた紙から煙が現れる。煙が晴れると、サトルの目の前に、リュックサックと、剣や防具など冒険者装備一式が現れた。


「おぉ、その紙は冒険者ギルドから支給される、収納魔法が書かれた紙!」


 小太りな男が、サトルに話しかけてくる。紫色のシルクハットに、紫色のきらきらしているスーツ。採寸があってないのか腹が出ていて、へそが丸出しだ。


「あなたは?」


「申し遅れた。まろは、このような者」


 まろ? この人、外国人なのか。日本語を不自由そうに話している。


 小太りの男は、名刺をサトルに渡した。


「サーカス団、団長。コブ・ト・リ。ふっ」


 サトルは、思わず鼻で笑ってしまった。


「日本人の皆さん。まろの名前を見て、笑う。なにか、おかしい?」


 いかん、ここは落ち着かないと。


 サトルは一度深呼吸をする。


「いえ、おかしくないです。コブ・ト・リさん。ふっ」


「あ、また笑った! やっぱり、まろの名前おかしい!」


「いえいえ、そんなことはありません。それにしても、自分のことを、まろって言うんですね」


 これ以上、笑ってしまうと相手に失礼だ。話題を変えよう。


「 まろは、日本の平安時代が大好き! あの文化に憧れて口調も真似した!」


 なるほど、歴史に影響される人は、見たことがあるが、ここまで影響されている人は初めて見たかもしれない。


「なるほど。サーカス団の団長が、わざわざ俺に話しかけて来たのは、なにか理由があるんですか?」


「うん。冒険者さんが、ここに来たのはわかっている。まろのサーカス団が所有する、あの大きなテントに出来てしまったダンジョンに入る?」


「はい。自分は、冒険者というよりは、ダンジョン配信者ですが」


「ダンジョン配信者も立派な冒険者」


 コブ・ト・リの表情は、どこか真剣な表情だ。


「それで、何か頼みごとがあるのですか?」


 ここまでの話で、サーカス団の団長は、なにか依頼があることに察しがついた。本題に入って、ダンジョンの中に入ろう。


「ダンジョンは、自然に消える事ない。ダンジョンを消滅させる方法、ダンジョンの最下層にある。ダンジョンコアを壊す」


「俺に、そのダンジョンコアを破壊させて欲しいのですね」


「うん! お願い! 報酬は、この通り!」


 コブ・ト・リは、そう言うと、百万円と書かれた小切手を渡してきた。


 ダンジョンは、月日が経つと、ダンジョンに住む魔物が育って強くなる。俺が、これから行くダンジョンは、まだ、ダンジョンができてから一週間ぐらいしか経ってない。最下層まで行くつもりはなかったが、俺でも行けるか?


「わかりました。できる限りのことはやってみます」


「良かった! よろしく、お願い! 仲間も一人、先にダンジョンにいる!」


「仲間?」


 俺は、ソロ配信者だ。事務所やクラブなど団体に所属していない。


「同じダンジョン配信者、『邪眼が導くままに、私はやってきた』と言って、ダンジョンに入った」


 ダンジョン配信者の中でも、個性がだいぶ強い人が、ダンジョンの中に入っているみたいだ。なんだか、嫌な予感がしてきた。


「わかりました。俺もダンジョンの中に行きます」


「ダンジョン攻略お願い!」


 コブ・ト・リは、深々と頭を下げた。





 サーカスダンジョンの中に入ると、いくつものテントが建てられ、テントとテントの間には、通路が作られていた。


「さすが、サーカスダンジョン。個性的なダンジョンだ」


 サトルは、リュックサックから、一枚のカードを取り出す。カードには、魔法陣が描かれていた。


「配信を始めるか」


 カードが光出し、サトルの視界の端に、コメント欄と配信時間が表示された。


『配信を始めますか?』


 視界の中央に文字が表示される。


「配信スタート!」


 サトルが、そう言うと、配信時間の時が刻み始めた。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る