第二話「モモ様の胸を揉ませてください!」
「ふっ……!?」
思わず吹き出してしまう所だった。ワイシャツと下着だけって、女神様なんて格好をしているんだ。去年高校卒業したばかりの俺には、刺激が強すぎる。
胸の大きさは、大きすぎず、小さすぎない。それに、綺麗な足。そして、顔も可愛い。女神って、外見も女神と言われるぐらいに可愛いのか。
「モモ様。来客者ですよ」
「もう、そんな時間―?」
「はい。その、だらしない服装と、ぼさぼさの髪を何とかしてください」
「えー?」
女神モモは、サトルの方を見る。
「うっ……!?」
モモ様の恰好を。これ以上直視したら、ダメだ。ワイシャツと下着姿の、光景が脳内にこびりついている。強烈な記憶が残ると、日常生活に支障が出かねない。
「仕方ないなー」
モモが、そう言った瞬間、モモがいた方向から強烈な光を発した。
「サトル君だっけ?」
「は、はい」
サトルは、モモの方を見ないで、言葉だけ返した。
「こっちを向いて返事してくれる? だらしないけど、私、女神だよ?」
「で、でも」
モモ様の姿、どこを見たらいいかわからない。
サトルは、恐る恐るモモの方を見る。
「え?」
サトルは、目を見開いて驚いた。
汚部屋となっていた部屋は、ゴミ一つも落ちてない綺麗な状態になっている。
モモ様の姿も、ワイシャツ一枚と下着だけの姿から、白いロープに着替えている。ぼさぼさだった髪も、整えられボブの髪型になっている。ゲームやアニメなどで、よく見る女神の姿だ。
ワイシャツから、白いロープになったら、下着が見えなくなった分、より胸が強調されている。目線でばれないように、顔だけを見るようにしよう。
「初めまして、私は、ここで女神をしているモモと言います」
「初めまして、サトルです」
モモは、サトルの返事を聞くと、自分の目の前に白い文字を出現させた。
熟練の魔術師しか使えない、浮遊文字だ。紙やペンに頼らず、空中でメモを取ることができると聞く。さすが女神様だ。あんな高度な魔法を使いこなせるなんて。
「じゃあ、サトルくん。早速だけど、あなたに授けるユニークスキルを決めて行くよ?」
「は、はい!」
モモは、くすっと笑顔を向けて、浮遊文字で出現させた文字をスクロールし始める。
それにしても、胸の大きさは、何カップなんだろう……。ワイシャツの時は、大きく見えなかったけど、着やせをするタイプなのか? だ、だめだ! 雑念に囚われてしまっている。俺は、百万人登録者になって、誰もが羨ましがる人生を歩むんだろ。
「じゃあ、早速一つ目の質問。どんな配信映えするスキルが欲しい?」
配信映えするスキル……。確か、有名ダンジョン配信者は、モンスターを攻撃すると、様々な音が鳴ったり、モンスターに催眠をかけて、パロディ動画を撮影したりしている。唯一無二の個性があるスキルを持っている場合が多い。
「自分の配信じゃないと、見られないスキルが欲しい」
「個性的なスキルね」
モモは、嬉しそうな顔をして言う。
「じゃあ、次の質問。一年間ダンジョン配信してきたと思うけど、これが足りないって強く思った所はある?」
自分の配信で、足りないとこ。
過去に動画のコメントで、『地味』って書かれていて、落ち込んだ記憶がある。
「自分、魔法とか使えなくて、配信が地味になることが多いと思います」
「なるほどね。地味になりすぎる」
その後も、モモの質問に、サトルが答える質疑応答を繰り返していく。
「じゃあ、最後の質問。配信して良かったと思えることは?」
「配信していて、良かったこと……。それはリスナーと言う、ただ生きて行くだけだと、会うことがなかった人と会えたことです!」
「うん。良い返答ね」
モモは、浮遊文字を上にスワイプさせた。すると、白色の浮遊文字は。噴水のように天井に向けて噴き出す。
なんて、幻想的な光景だ。
「今の質疑応答で、あなたの適性がわかったわ! あなたは、リスナーを大切にしている素晴らしい人よ!」
上に散らばった白い文字が、神々しく輝き始めた。
「そんな、あなたには、リスナーによる行動選択権、通称『リスナー選択権』という、ユニークスキルを付与するわ!」
散らばった文字が並んでいき、『リスナー選択権』の言葉になった。
「リスナー選択権……?」
初めて聞くスキルの名前で、サトルは首を傾げた。
「ユニークスキルは、説明を聞くより、実際に体験した方が、わかりやすいわよ。サトルは、ダンジョンが出来る仕組みはわかっている?」
「はい。ダンジョンは、その場にある土地や建物の特性と、浮遊している死んだ人間の魂が集まって作り出された迷宮です。死んだ人の魂が、混ざっているので、命の危険が大きい反面、ダンジョンでしか手に入らない貴重な宝や鉱物などが存在しています」
このスカイツリーも、ダンジョンでしか手に入らない特別な素材を使っている。ダンジョン外で採れる素材より、耐久性が数倍高いとニュースで報じられていた。
「正解よ。冒険者なら、宝や採れる特殊な素材を目当てにダンジョン選びをする。ダンジョン配信者は、宝などよりも、映えを意識した、ダンジョンを選ばなければいけない。配信映えする、ダンジョンの特性を把握する必要があるわ。配信映えのしないダンジョンに行っても、撮れ高は少ないからね」
モモの何も持ってない右手から、突然白い紙が現れた。
「モモ様。それは?」
「数日前、面白いダンジョンが現れたわ」
モモは、サトルに紙を渡す。
「この場所は?」
モモから、渡されたのは地図だった。しかし、印を付いている場所は、何もない空き地だ。
「そこは、世界中で公演している有名なサーカス団が、サーカス会場を設営していたの」
「サーカス会場が、ダンジョンになったんですか?」
「その通りよ。ただでさえ、行かないと何をしているかわからないサーカス。そんなサーカス会場にできた、ダンジョンなんて映えるしかないでしょ。サトルは、そこに行って、自分のユニークスキルを確かめなさい」
サトルは、モモからの指令に、「わかりました」と返事をして頷いた。
「そういえば、サトルって百万人登録者を目指しているのよね?」
「え、はい。目指しています」
「もし、百万人登録者、突破出来たら、私からお祝いをしてあげる」
「本当ですか!」
サトルは、つい大声を出してしまう。
女神からの褒美って、一生の思い出になるぞ。女神から褒美を貰える人なんて、世界中を探しても、滅多にいない。
「えぇ、本当よ」
モモは、優しく笑って見せた。
「お祝い内容は?」
「そうねー。私に出来ることなら、何でも用意するけど、なにがいい?」
何でも用意する。
サトルは、考える素振りを見せて、一瞬モモの胸を見た。
「モモ様。神器などは、あげてはいけませんよ」
巫女は、モモに忠告をした。
「わかっているわよ。サトルは、悪い人には見えないから、お礼をするって言ったのよ。私で解決できる事を要求してくれるはずだわ。そうでしょ?」
「はい! 決まりました」
心広い女神様なら、彼女いない歴=年齢である、俺の願いも許してくれるはず。
「あら、早いわね。お願いはなに?」
モモは、首をかしげて聞く。
サトルは深呼吸をする。
そして、心の中で決心をした。
「モモ様の、おっぱいをノーブラで、揉ませてください!」
サトルが、この言葉を言った瞬間、巫女さんは雷に打たれたような表情をして、モモは顔を赤面させた。
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