比較対象が良くないだけで実は優秀な子たち

 アタオカ思考を戻すためのリハビリ回です(╹◡╹)


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 みんなから沢山心配されて、怒られた日の放課後。私は智洋くんの部屋に連れ込まれていた。プリーズ辱めミーを伝えている少女と、性に飢えた若い男子高校生。当然何も起こらないはずもなく、部屋の中に撒き散らされるのは迸る体液……などではなく、消しゴムのカスである。消しカスくらいまとめて捨てなさいよ、汚いな。


 集中のあまり周囲への意識が疎かになっている智洋くんにチョップを落としてカスを片付けさせつつ、解かせている問題集の内容をチラ見する。……あれ?なんで光ちゃんは片付けられてないの?カスなのにっ!だって?あまり強い言葉を使うなよ。泣くぞ。


 また勝手に一人でめそめそしだした私と、消しカスをちゃんとゴミ箱に捨ててきた智洋くん。普段はちゃんと捨てられるのに、今日はよっぽど集中しちゃったんだね。すごくえらいけど、でも周りが見えなくなるのはダメだよ。光が泣いてたらすぐ慰めに来てね。


 我ながら面倒な女だなぁと自覚しつつ、言われた通りに慰めてくれた智洋くんに頭を撫でられてえへへとする。光ちゃんはとてもちょろい子だから、慰められるとすぐに機嫌が治ってしまうのだ。赤ちゃんかな?脳みそはもうしわくちゃである。



 それはともかく、今日私が智洋くんのお家に来たのは、智洋くんのお勉強に付き合うためである。私にふさわしい相手になるまでは私のことを辱めないなんて意思表示をした智洋くん。おやつの分際で、私にお手頃扱いされることを拒絶した智洋くんだ。いつでも好きなタイミングでぶっ壊せるように整備しないといけないから、智洋くん側のメンタル調整だね。


 あと、ついでに今一番楽に消費できるおやつくんの価値をあげることで、他に収穫がなかった時の備えも兼ねている。ほら、私って理想が高いから、もっといいものをと上を目指しすぎて、結局何も得られない可能性があるじゃない。二兎を追うなら予め家畜を飼っておけば安心、ご飯の確保は大事だね。やはり私は畜産業者の鑑だな。こういうリスクヘッジのせいでキラキラと出会う機会を失っている説、あると思います。


 まあそれでも、やらない畜産よりもやる畜産。智洋くんは食べごたえがあるようにぷくぷく肥えてもらわないといけない。そうなるとやはり、私が自分でご飯をあげるしかないわけで。……ここまで来たら智洋くんが私から離れるとも思えないし、一人でお勉強できるやり方を教えるべきか?そうすれば私はもっとキラキラ探しに集中できるし。悩みどころだね。


 実際問題、最低限の利益を確保するためにやっていることだが、これで才能ちゅるちゅる本業が疎かになっているのは事実である。智洋くんは美味しいおやつで、ついつい一緒に過ごしたくなってしまうが、それは私にとって決して好ましいことではないのだ。


 両側のこめかみに人差し指を当ててクリクリ。私が現在追いかけているうさぎさんは3匹で、全部追いかけるには時間が足りない。簡単な算数の問題だ。時間が足りないなら家畜のお世話をオートメーション化すればいい。簡単だね。


 というわけで、智洋くんに対して“これまでの勉強法は全て忘れてください。あなたはおやつです”と新しい命令を刷り込む。おやつ云々は伝えないけど。突然命令をポカンされてぽかんとなった智洋くんに新しいお勉強法を教えて、しばらく様子見。私にふさわしい人って、わからないところを全部私に教えてもらう人なの?と聞いてあげれば、純粋な少年はいとも簡単に私の言葉を信じてくれた。ちょろくてかわいいね。


 暫くは自己学習タイムに入った智洋くんをその場に放置して、全力で私のご機嫌取りをしてくるお隣ママの元に行く。うんうん、ヤカラに対して何も出来なかった無力な智洋くんが、私から愛想をつかされていないか心配なんだね。私が智洋くんとくっつかないと、お隣ママは悲しい悲しいだもんね。心配になるよね。


 大丈夫!智洋くんを捨てる時は他のきらきらを見つけた時だから!と安心させてあげたいのは山々だが、どちらにせよ智洋くんが捨てられる可能性を伝えることになるのでお口にチャック。ばってんつけてミッフィーのお口だね。うさぎさんだから三方向に開くはず。


 うさちゃんのお口は置いといて、お隣ママのメンタルもある程度調整しないといけない。私のことが好き好きなのはいいけれど、変に拗らせて智洋くんのことを虐待し出したりしたら困るからね。普通に考えればそんなことにはならないのだが、世の中には恋敵に対して積極的に害を与える人種もいるのだ。お隣ママがそうだと言って危険視するわけではないが、危険の種は芽を出すより先に摘んでおきたい。……お隣ママの育てかた的にそうなってもおかしくないからね。つまり全部私のせいである。やっぱり転生者って最低だな。


 おしゃべりをして、優しい言葉を囁いて、思考回路を歪ませる。光ちゃんのことが大好きになるように、少しずつ作り替えていく。……まあ、ママ様譲りのつよつよお顔のおかげで、少し親身になって相談に乗るだけで、簡単に好意を持たれるんだけどね。特別なことなんて何もしていないよ。……なんなんだ、この身体。


 もしやママ様は単性生殖して人類をゆっくり侵略する生物兵器だったのか?と意味のわからないことを考えながら智洋くんのお家を出て自宅に帰り、迎えてくれた妹ちゃんの姿を見てこの子がそんな恐ろしいものなわけないかと考えを改める。今日も妹ちゃんはかわいいね。ママ様も同じくらいかわいいね。


 わからないところを用意して待っていた妹ちゃんにお勉強の解説をすることで、お勉強中に放置してそのままだった智洋くんのことを思い出す。新しいお勉強の仕方って、要は妹ちゃんに教えている方法なんだよね。自分で考える力をつけて、ちゃんと学力が成長するような教え方。そのためには絶えず志向の誘導が必要なのだが、お家に帰ってきてしまったからそれもできない。


 中途半端な状態で放置されることになった智洋くんのことはさておき、妹ちゃんのお勉強だ。学力が順調に伸びてきて、この調子なら私と同じ中学にも合格できそうな妹ちゃん。パパ上の、娘のためにお金じゃぶじゃぶしたい欲を発散させてくれそうな妹ちゃん。


 そんな妹ちゃんは、今こそお勉強に集中していてほかのことをほとんどしていないものの、さすが私の妹と言うべきか、ママ様の娘と言うべきか、なかなかに才能溢れた子である。才能を伸ばすような育て方をしてきたから当たり前かもしれないが、この妹ちゃんは優秀なのだ。


「お姉ちゃん?そんなふうに見られたらちょっと恥ずかしいよ……」


 ふいっと目を逸らして少しモジモジする少女。あんよが上手で走るのも上手だから、小柄なくせに運動会ではリレーの選手である。ちっちゃいくせにスポーツが得意なのだ。私には劣るけどね。そして頭の回転が早く、学力も高い。順調に行けば難関私立中学に合格出来るのだから、そりゃあとても賢い。私は特待生だったけどね。そして更にはママ様譲りのかわいいお顔。私と同じだね。


 ……いや、妹ちゃんをほめて、私の方がすごいんだぞっ!どやっ!ってしたいわけじゃあないんだ。転生者である私を比較対象にして、多少見劣りする程度でしかない妹ちゃんの異質さを褒めているんだよ。どうなってるんだよこの子。


 妹ちゃん自身は私と比較して若干劣等感を感じているようだが、十分にこの子だっておかしいのだ。頭がゆるふわなママ様と、一般人なパパ上との間に生まれてきたとは思えない。やはり私の教育が良かったのか?智洋くんと妹ちゃん、教え子が二人揃って有名中学に受かるのであれば、指導力の証明になるのではなかろうか。ただふたりが優秀なだけだね。そうだね。


 お勉強中の妹ちゃんの髪を手ぐしで整えて遊びながら、いい子いいこと頭をなでる。光ちゃんはろくでなしだから、才能溢れる少年少女が大好きなのだ。こんなにも私に懐いていて、素直でいい子な妹ちゃん、才能がなかったとしても大好きだが、才能があるのでもっと好きである。妹ちゃんの食べごろはいつだろう。どんな形がいいだろう。そう考えながら触れ合い、お部屋に飾った絵を見るだけで私は幸せになれるのだ。


「お姉ちゃん、手つきがなんかヤダ。あと目がこわい」


 今はお勉強に集中したいからあっちに行ってて、と妹ちゃんに邪魔者扱いされる。邪魔しかしてないから当然だね。残念でもなんでもない当然だ。私が逆の立場でも同じように思うだろうし。



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 久しぶりに短編書いたのでよければどうぞ(╹◡╹)


 https://kakuyomu.jp/works/16818093074389923056


 表面上幸せそうな人が内心めちゃくちゃになってたら興奮するよねって性癖です(╹◡╹)

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