一般性癖TS転生少女のちょっと過激なスキンシップ

 思ったように智洋くんを食べることが出来ず、お腹ぺこぺこな状態でおうちに帰ってから、空腹感を紛らわせるためにお勉強中の妹ちゃんをもちょもちょと弄ぶ。ほっぺたやーらかいね。すべすべもちもちだね。たべちゃいたいね。


 むーにむーにすーりすーりして、お姉ちゃんくすぐったいっ!じゃま!とつんつんする妹ちゃんを愛でる。柔らかくてもちもちのほっぺた、思いっきり引っ叩きたい。きっと理解を拒むように放心して、赤くなった頬に手を当ててくれることだろう。見たい。とても見たい。それまであった信頼が崩れる瞬間、絶対美味しいもんね。


 妹ちゃんの両頬をそっとおててで包み、そのかわいいお顔を正面から見つめる。とってもかわいくて、美味しそう。私に食人の趣味はないが、妹ちゃんの肉なら美味しく食べられる気がする。たっぷり叩いて柔らかくして食べないと。


「……おねえ、ちゃん?」


 飢えたに見つめられ、恥ずかしそうな、困惑したような声を出す妹ちゃん。私になにか酷いことをされるなんて、欠片ほども考えていないその純粋な瞳を穢したい。濁らせたい。それはきっと、とってもうつくしくて……。


 パァンッ!!


「おねえちゃん!?」


 ……かわいいかわいい妹ちゃんの頬が叩かれた音……ではなく、既のところで正気に戻った私が気付けのためにほっぺパンした音。犠牲になったもちもちは小学生のものではなく、高校生のものだ。あぶないあぶない、妹ちゃんはまだ食べ頃じゃないから、どれだけ美味しそうに見えても我慢しなくてはいけないのだ。そんな簡単なこともわからなくなってしまうとは、やっぱり空腹は恐ろしいな。……ところでビンタのことをほっぺパンって言ったらちょっとかわいくない?同時に叩いてサンドイッチ!


「……おねえちゃんーっ!?!?」


 気付けをして、頭を振って冷静になっても、やっぱり妹ちゃんがかわいくて美味しそうに見えたので、我慢できずに頬をぺろり。特に甘い味がすることもなく、見事なまでに無味である。さてはこの子帰ってきてから顔洗ったな?かわいた汗のしょっぱさ位はあると思っていたから、私はとても悲しくなった。えーんって泣きたい。……本当に泣きたいのはお勉強していたら突然ちょっかいかけてきた姉がセルフビンタして、心配していたら勝手に舐められた妹ちゃんだよ。あと娘がそんな奇行をするようになったママ様。


 二人の気持ちを考えたら涙が引っ込んだので、妹ちゃんの味見は終わりにしてママ様が作ってくれているはずのおやつを確認する。ひと舐めで済んだことに感謝するといい。……やっぱり空腹状態って良くないね。自分で何をしているのかわからないし、おかしなことでも普通のことに思えてくる。


 冷蔵庫を勝手に開けて、ママ様のかわいい字で今日のおやつと書かれたパウンドケーキを食べる。ペロリと完食してから気がついたのだが、どうやら私は肉体的にもおなかがすいていたらしい。先程までおかしかったのはそのせいか。そのせいだ。そういうことにしておこう。ほら、心の栄養が足りていない時って攻撃的になったり、文字通りの意味で周囲に噛みつきたくなったり、食欲が湧いたりするじゃん。つまりそれってお腹がすいている時も逆のことが言えるってことだよね。


 と、自分でも何を言っているのかわからない理屈で一人納得し、冷静になったところで妹ちゃんにごめんねする。謝られた妹ちゃんはまだ理解が追いついていないようで、困惑した姿を見せてくれた。どの瞬間を切り取って見てもかわいいね。額縁に入れて飾りたいくらいだ。そうだ、額縁を作ろう。


 というわけで、お勉強中の妹ちゃんをその場に残して、私はお部屋に入る。善は急げで、すぐにでも額縁を作りたいからね。転生者が善とか面白い冗談だが、まあことわざなのでいいだろう。そんなことはともかく作業を始めなくては。


 ちなみに、ここまでのやり取りの一番異常なところは、私が妹ちゃんを舐めたところ……ではなく、一連の行動を見ていて、あらあら仲がいいのねとにこにこしていたママ様だ。自分の娘が姉に食われそうになっているのに、なぜだか止める気配はなかった。ママ様の価値観はどうなってるんだよ。


 きっと諸悪の根源であろうパパ上を許さないことを心に決めて、無心で木工すること一時間。ぷにすべお手手のために、今日の分はこれで終わりだね。一度リビングへ行って妹ちゃんのお勉強を確認してから、問題がなさそうだったので趣味を継続する。ネットの海を泳いでキラキラを探す素敵な活動だね。少し前まで行き詰まりを感じていたことだったが、なんとも驚いたことにこれ経由で美保さんが私の存在に気付いたとの事なので、何かしらのものを引きつける効果はあるのだろう。つぎ芸術関係で引き寄せるのは、今度こそ私に対して悪印象を持った転生者かもしれないが。


 そんなことが怖くてネットができるか!の精神で、何人か目星をつけている候補の成長を確認。顔も知らない人物からのアドバイスを受け入れられるくらい自己肯定感の低いものにはアドバイスをして、そうでないものはケセラセラの精神で放置。私が何かをしたところでいい方向に行くとは限らない人だって沢山いるのだ。この手の者は、キラキラがあれば唾をつけて個人的に仲良くするくらいがちょうどいい。もっとオープンに関わってもいいのだが、美保さんや聡くんにバレている以上迂闊なことは出来ないのだ。泣けるぜ。


 顔もわからない人達にたくさんがんばれがんばれしたら、再び妹ちゃんの進度確認。こいついっつも妹ちゃんばかり見てるな。友達いないのか?……あんまり多くないんだよ。言わせんなってはずかしい。そう考えるとなんだか寂しくなったので、すぐ目の前にいる妹ちゃん……だとお勉強の邪魔になるので、鍋を見ながら煮えるのを待っているママ様。ママ様、お鍋は蓋を閉めた方が早く沸騰するよ。……うんうん、熱対流で揺らぐ水面を見るのが楽しいんだね。ママ様不思議でかわいいね。


 忙しくないならちょっといい?と許可をとって、は〜ぎゅ〜っと抱きしめる。抱きしめたのは輝く未来じゃなくて天然なママ様だね。みんなを応援はしている。3分の2くらい一致しているから、これはもう実質私がプリキュアと言っても過言じゃないのではなかろうか。過言だね。


 あらあら今日は甘えん坊さんね?と抱きしめ返してくれるママ様。柔らかくって、ちょっと力を込めたら折れてしまいそうな細い体。パパ上のものじゃなかったら私のものにしたのに……。


 そういえば最近ママ様、よくあらあらって言うよね。と雑談を始める。ぎゅっと抱きしめたままお話するの、なんかやらしいね。やらしくない?私が考えすぎなだけ?それもそうか。ただの親子のスキンシップだもんね。


 あらあらだけじゃなくてうふふの時もあるのよとにこにこ話すママ様。顔が見えなくてもにこにこだとわかるのは私の第六感である。ちなみに、突然そんな未亡人みたいなキャラ付けを始めたのは、そっちの方が人妻っぽくて興奮するとパパ上に言われたかららしい。高校生にもなる娘がいてまだまだお盛んな両親に呆れればいいのか、それともそんな夫婦の会話をあけすけに語るママ様に呆れればいいのか。……ママ様はかわいいから悪いのは全部パパ上だね。かわいいは正義!よって無罪!その皺寄せは全てパパ上に向かうのだ。恨むのなら素敵なお嫁さんを貰った自分を恨むんだな。


 うふふの時もあるという割にはあらあらしか聞かないことを疑問に思って聞いてみたら、 個人的にそちらの方を気に入っているらしい。パパ上はうふふの方を気に入っているから、普段はあらあらモードで夜だけうふふモードらしい。やめてよぅ、ママ様の夜の話とか聞きたくないよぅ。脳が破壊される。


 というわけで普段はあらあらモード、略してアラモードよ!と自信満々に言うママ様。うん、ごめんねなんだけどそれあんまり流行らないと思う。そう伝えると首をかしげられたので、アラモードは流行って意味なんだよと教えると、そんなことを知っているなんて光は賢いわねと褒められた。えへへ、ママ様になでなでされるの好き。


 私のような、魂の汚れ切った転生者でも、ママ様を相手にするとこんなにも穏やかな気持ちになれるのだ。そう考えると親というものは偉大だな。……前世の親?思い出させるなよ気分悪い。ママ様と比べたらあんな連中カスや。パパ上と比べてもカスや。私、なんだかんだでパパ上のことも好きなんだよ。ママ様ほどベタベタ甘えていないからと言って、感謝していないわけではないし、愛していないわけでもない。ただちょっと空回りしているところが愛おしいなって、こじれた愛し方をしているだけなのだ。


「おねえちゃーん?」


 うんうん、ちゃんと灯のことも愛しているよと、わからないところがあって聞きに来たかわいい妹ちゃんを抱きしめる。もちろん一緒にいたママ様も諸共だ。ハピネス注入、幸せチャージ!これで明日も頑張れる。……ちなみに灯のわからないところは参考書の86ページを見ればわかるよ。


 目的を達成して戻って行った妹ちゃんを見送って、もう1回ハグする?と聞いてくるママ様の誘いを涙を飲んで断る。それよりも今日は、ママ様と一緒に料理がしたい。パパ上にいつもありがとうと伝えるために、ちょっと気合いの入ったやつ作りたい。


 ……転生者にだって、家族に対する感謝の気持ちくらいちゃんとあるのだ。

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