またしても何も知らない幼なじみくん(13)

 話がっ!進まぬっ!(╹◡╹)


(進むようなストーリーなんて)ないです(╹◡╹)


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 かわいい智洋くんの自尊心ゴリゴリを計画したところで、ちょうどお家の前に着いた。タイミングよくこれからお買い物に行くらしいお隣ママとこんにちはして、ついでだからと荷物だけ置いて着いていく。私よりもついて行くべきな智洋くんは、私が行くと言ったからか家で待っているらしい。思春期っぽくてかわいいね。


「いつも智洋のこと、見てくれてありがとうね。あの子ってば本当に光ちゃんのことが大好きで、光ちゃん以外に友達がいないんじゃないかってくらいあなたのことばかり話すのよ」


 残酷なまでに無遠慮に明かされる、お家での智洋くんの悲しい姿。なお、智洋くんに私しか友達がいないというのは紛れもない事実である。お隣ママ、貴方の息子はぼっちなのよ。


 そんなことは口が裂けても言えないので、学校でも楽しそうにしてますよと伝えておく。もちろん嘘じゃないよ、一人で楽しそうに本読んでるし、宿題に頭を悩ませている。とってもかわいいんだよ。なお、このお隣ママは私と智洋くんの関係が以前まで同様全く問題ないと信じきっている。まあ、私の態度が変わらなくて、智洋くんが私のこと大好きオーラを出しているのだから、そう勘違いするのもしかたがないよね。


 子供の頃の、光ちゃんとけっこんするー!というのを未だに擦られている智洋くんには同様と爆笑を禁じえないが、まあ彼自身の行動の結果なので、どうすることもできない。家族にはぼっちなことを隠したいだろうし、私に対して抱いている感情も相談しにくいだろう。そうなるように育てたから、当たり前だね。


「そうそう、ちょうど今日蛍さんには相談したんだけど、ちょっと実家の方でお葬式があって、行かないといけなくなっちゃったの。その間、あの子の面倒見て貰えないかしら?」


 年頃の男女(周囲から見れば両思い)を一緒に過ごさせるなんて何事かと言いたいところだし、一般的に考えたら智洋くんの面倒そんなことを私に頼むなと言う話なのだが、私は二つ返事でOKする。おやつが近くにあるのはうれしいし、何より、ママ様が頼むのなら私に頼むべきだと言ったらしいからね。ママ様からの期待は裏切れない。裏切ってもいいけど、今はまだそのときではない。


 そんなことを考えながら、お隣ママに具体的な日程の話を聞く。ふむふむ、まるっと空くのが3日間、休日を挟むから、朝起こしたりするのはしなくてもいいけれど、食事の方を主に見てもらいたいと。少しでも私にふさわしくなろうと頑張っているおかげで智洋くんは自主的に宿題をやるし、確かにママ代わりをしてあげなきゃいけないことはそれほど多くないね。


 そうと決まれば、その日の食事は私が調理を任されるとして、智洋くんの配置をどうするかが問題だね。最初から私の家に泊まらせるのもありだし、私が通い妻をするのも悪くない。どちらも一長一短で捨てがたいのだが今回はお泊まりの方針で行くべきかな。私だって智洋くんだけに構っていられるわけじゃないからね。家族サービスを考えれば、そちらが適切だろう。


 幸い、私たちは家族ぐるみの仲なので、泊まるのが智洋くんであればパパ上からも反対されることはないだろう。むしろ、少し前までパパ上の中で智洋くんは、将来の娘婿くらいの認識だった。最近はあんまり会ってないから知らないけどね。


 どうせなので夕飯のメニューをずらすために相談を重ねつつお買い物を終わらせ、智洋くんにしっかり伝えておいてもらうよう頼む。その後おうちに帰ってママ様とも話して見た感じ、どうやら二人の中では、若い二人に2人きりの時間を作るべく、通い妻コースが想定されていたらしい。貞操観念とかどうなっているんだろう。信用されているのかな?そういうことにしておこう。


 やることはやっても避妊だけは忘れるなと言い含められるよりはまだマシかもしれない。まあ、少なくとも私はそういう行為をするつもりはないのだけどね。貞操観念うんぬんの理由でも、心の性別でもなく、私の初体験の価値は今後まだ上昇していく見込みがあるのだ。こんなところで失ってしまうのはもったいない。それに、智洋くんだって私に手を出す度胸はないだろうしね。


 本当に通い妻コースじゃなくてよかったのかと聞いてくるママ様に、私にはまだそういうのは早いよぅ、と伝えて、ねぇ……とにまにまさせる。それに対してちょっと怒ったように会話を終わらせれば、完璧な意識している美少女ムーブは終わり。夏休みの天啓の件で、ちょっと不審に思われただろうから、こういう細かいところで普通の女の子アピールしておかないとね。え?普通の女の子は資格コレクションしたりしないって?うるさいな。君の常識で普通を語るなよ。


 ママ様にとって普通の子供とは私であり、妹ちゃんなのだ。二人とも優秀だから、普通のハードルが爆上がりだね。……ところで、妹ちゃんもハイスペなら、やはり私の才能は遺伝由来なのではなかろうか。パパ上とママ様が遺伝子調整に手を出したってコトッ!?


 どうりでママ様よりも優秀に仕上がったわけだと一人得心して、お隣ママと相談した晩御飯計画を共有する。向こうはお隣ママが完全に把握しているからともかく、こちらは一応ママ様の管轄になるからね。私の一存で決定することは出来ないのだ。


 晩御飯のメインはハンバーグ、カレー、オムライス。ああうん、灯の分はちゃんとフワトロオムレツにしてあげるからね。お姉ちゃんわかってるから大丈夫。朝は前の日の残りを食べればいいだろうし、お昼は適当にサンドイッチでも作ればいいだろう。あとは栄養バランスのために頭の中の食品成分データベースと照らし合わせて、必要な野菜なんかをサラダとスープに。栄養学について覚えておいてよかった。目指せママ様以上のママムーブ。私みたいなドブ臭いやつにママ様の代わりが務まるわけないだろ。


「ひろちゃん遊びに来るの!?灯たのしみ!」


 私とママ様の会話を、横でチョロチョロしながら聞いていた妹ちゃんが、智洋くんのお泊まりを理解して喜んでいる。精神年齢が近いせいか、妹ちゃんは智洋くんを気に入っているのだ。あ、チョロチョロって動き回っている方の擬音ね。けして、リビングでご飯の相談をしている私たちの横で粗相をしているわけではない。妹ちゃんのブランドイメージに関わることだから、誤解されないように気をつけないとね。


 精神年齢が近くて、お互いによくお互いを知っている幼なじみ。ママ様に瓜二つな妹ちゃんは、私ほどではないが何でも卒なくこなすタイプだしお嫁さんとしては十分すぎるほど優良物件だ。キラキラを失っても十分良さは残るだろうし、その頃におやつくんが要らなくなっていたらあてがうのもありかもしれないな。私に飼育されたもの同士、相性は悪くないだろう。


 そうなる頃には智洋くんも妹ちゃんも、もう私のことを慕ってはくれないのだろうなと少し感傷的な気持ちになりながら、選び得る未来の一つとして想定しておく。アフターケアを欠かさないこともまた、一流の証明だからね。むしろそうして傷を舐め合うところから始まった愛を、私の乱入でぐちゃらせるのもありかもしれない。……考えてみたら結構興奮してきたな。歪ながらもかけがえのない愛が崩れる瞬間、好物です。


「お姉ちゃん、なんか楽しそうだね。やっぱりひろちゃんが来るからうれしいの?」


 少しからかうような、妹ちゃんの言葉。私がママ様にしたみたいに否定すると想定して、それをからかおうという魂胆だろうね。君の考えることはお見通しなんだよ。


「……うん、そんなところ。ひろちゃんがうちにお泊まりするのってとっても久しぶりだから、なんかうれしくなっちゃった」


 君たちの期待と信頼を裏切ったあとのことを考えて気持ちよくなりかけていたんだよなんて、本当のことは言えないから、適当にそれっぽいことを言いつつうっすらと頬を赤くしながら、照れるように視線を逸らす。大好きなお姉ちゃんの雌っぽいところを見た事で、妹ちゃんに30ダメージ。ついでに私に50ダメージの判定だが、私は演技しているだけなのでダメージ無効だ。ふんっ!小娘が。


 娘の甘酸っぱい初恋で回復しているママ様に判定負けしつつ、小娘を下したことに気を良くした私は今日の晩御飯を作り始める。自分より料理が得意な娘にダメージを受けるママ様。これで私の一人勝ちだね。ところで甘酸っぱいって喜んでたけど、その酸っぱさ、悪くなっているからかもしれないけど大丈夫?お腹壊さないようにね?




 しかしまあ、お泊まり会は楽しみだ。智洋くんの脳を溶かしたり、壊したり、たくさん楽しいことが待っているだろうな。ひろちゃんのために、光がんばるっ!なお、色々な気持ちをこじらせつつある智洋くんが、私にお世話されるとなって内心穏やかではないだろうことは考えないものとする。家畜の気持ちなんかに配慮していたら畜産業は務まらんよ。

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