第3話 異世界特典
「私の姉が何かしちゃいましたか?」
「私の姉?そんな嘘に私が騙されると思っているのか!!」
予想通りの反応に、私はため息を吐く。前にも言ったが私と姉の一姫は一卵性双生児、所謂双子と言うやつだ。顔のつくりも体系もほぼほぼ同じ、親族と親しい友人以外には見分けがつかない。しかし、一姫と私では顔のつくりに明らかな違いのある個所がある。
「あの、すみません。姉の手配書とか今あります?」
「それならあるが」
あるんかい。手配書まで作られてるなんて姉よ、本当に何をしでかしたのだ。
しかし、姉の手配書あるとは僥倖だ。これで私の身のあかしを立てることができる。
「ほら、見てみろ。髪型は少し違うようだが顔はまったく同じではないか!!」
「ところがどっこい兵隊さん。私と子の手配書に載っている姉の顔とは決定的に違うところがあるのですよ」
「ほう、それは一体どこなのだ?」
どうやら兵隊さんの興味を引くことが出来たようだ。
「ほら、私には右目に泣きボクロがあるのに、姉の一姫にはありません。触ってみても良いですよ」
私は泣きボクロ指差しながら、ズイと右目を兵隊さんに向ける。すると、兵隊さんが私の顔と手配書に載った一姫の顔を交互に見比べる。
「確かに、では貴様は本当に――」
「
言って恭しく一礼する私。すると兵隊さんが、
「そうか、疑ってすまなかったな」
言って頭を深く下げる。自分の間違いを素直に認めて謝る。その姿勢尊敬に値します。
「それで、お姫様はご無事なのですか?」
「おお、そうだ!姫!姫はご無事か!?」
言って兵隊さんは馬車の中にいる姫様の無事を確認する。すると馬車の中にいた姫様が言う。
「大丈夫、わたくしに異常はありません。だけど、盗賊たちはどうして何もせず立ち去っていったのです?」
「それは――」
盗賊立ちが立ち去った理由を言い難そうにする兵隊さん。それならば姫様に私の顔を見てもらった方が早いだろう。
「ちょいと失礼いたしますよ」
言いながら兵隊さんの間をするりと抜け、私は姫様の前に出る。
「あ、おい!馬鹿!」
馬鹿とは失礼な。しかし、私の顔を姫様が見た途端、姫様は顔を青くしてフラリとその場に倒れこみ気絶した。
―――十数分後
「勘違いしたとはいえ、命の恩人の顔を一目見て気絶するなんて……本当に申し訳ありません」
そう言って姫様は深々と頭を下げる。ちょっと、王族に頭を下げさせちゃってるよ私。周りの兵隊さんたちも戸惑っちゃってるって。
「頭を上げて下さい姫様。それに姫様たちを助けられたのもこの顔のおかげ?せい?ですし、お気になさらないで下さい」
「こうなるとわかっていたから止めたというのに……だからその点はこの娘――ルナの責任でもあります。姫様はお気になさらずに」
イケおじの兵隊さんこと、ガルシアさんが言う。因みにガルシアさんの外見は茶髪を短く刈り込みブラウンの瞳をした整った顔立ちをしたイケおじで、体格はガッチリとした筋肉質身長は190センチメートルはありそうなくらいの高身長だ。
「ガルシア!ルナ様は私だけではなく、貴方たち皆の命の恩人でもあるのです。無礼は許しませんよ!!」
姫様はそう言う。しかし、私としては助けたという実感がないため何とも言えない気分になる。ほら、ガルシアさんも微妙な顔をしている。
「すまん」
あ、一応謝るんだ。謝られた私としても非常に微妙な気分だが、ここは姫様を立てるとしよう。
「いえ、別に気にしていませんので」
私がガルシアさんの無礼?を許すと、姫様は花のような笑顔を私に向ける。因みに姫様の外見は、銀色の美しい髪を腰のあたりまで伸ばし、瞳は碧眼。服装はあまり豪奢でないシンプルなドレスを着用している。
名前はロレーヌ・マグナというらしい。
「そういえば、ルナ様は何故このような場所に?」
「姫様、私に様付けは必要ございません」
「ならば私も不要ですロレーヌと、名前でお呼びください」
私はガルシアさんに本当に良いのか?と視線を向けて確認する。するとガルシアさんはため息をつきながら姫の御随意に、とジェスチャーで知らせてくれる。よし、許可は取れた。これで無礼打ちなんてことにはならないだろう。
「それじゃあロレーヌ」
「はい!なんでしょうルナ!」
花のような笑顔を私に向けてくれるロレーヌ。まぶしい、そして目の保養になる。
「ロレーヌは転移者ってしってる?」
「基礎知識程度なら」
「それって今聞いても良い?」
私がロレーヌにそう質問すると、私とロレーヌの会話に割り込むようにガルシアさんが言う。
「それは駄目だ。姫には一刻も早く次の街へ行ってもらわねばならんからな」
「それってロレーヌの安全的な意味で、ですよね」
「それ以外に何がある」
「いえ、特には……」
まだ私の事を姉と疑っている線を考えたが、どうやらその線はなさそうだ。話を進めてしまおう。
「それじゃあ私も一緒にこの馬車に乗せてください」
一応命の恩人なのだ、これくらいは許してくれるだろう。ついでにロレーヌからこの世界についての話も聞けるし、安全に人里まで連れて行ってもらえる。一石三鳥、私ってあったま良いー。だが、
「そうなると私が同乗することになるが、それで良いなら許可しよう」
だよねー、流石に姫様とは二人きりにはしてくれないか。でもまあ、
「全然構いませんよ。ロレーヌはそれで良い?」
「はい、かまいません」
予想の内だ。むしろ予想通りに事が進みすぎて自分が恐ろしい。
「それではルナこちらへどうぞ」
「あいあい、お邪魔しますよっと」
ロレーヌの案内で馬車に入る。馬車なんて初めての経験だ。うん、外見よりも中は広く感じる。これなら人里まで快適に過ごせそうだ。
―――数十分後
そんな事を思っていた時期が私にもありました。
この馬車揺れがひどすぎるし、お尻がとにかく痛い。そういやなんかの本(ラノベ)で見たことがある。初期の馬車の車輪にはサスペンションなんていう便利機構が存在しないため、お尻に衝撃がダイレクトアタックてくると、でもまあ、それでも一人よりは何千倍もマシだ。ロレーヌとお話(情報収集)も出来たし、良しとしよう。
「それで、ルナも
「そうなるね」
「では貴女もイーターを持っている。というわけですね」
「イーター?」
なんだその中二心をくすぐる響きは。かなり気になる。
「イーターとは、異世界より転移、転生してきた者達が必ず持っている特殊な武器のことです。見たところルナは丸腰のようですし……」
マズイ、ロレーヌとガルシアさんが私の事を怪しんで見ている。私は内心焦るが、それを表に出さずに、
「あ~それはね~」
等と言いながら自分の服をまさぐりまくる。するとショートパンツのポケットの中から一枚のメモ用紙が出てきた。そのメモ用紙にはこう書いてあった。
武器に困ったらこう言いな。
「
バックウて、洒落かよアール。兎に角、必要な呪文?は唱えた。すると、私の右手に50センチメートルほどの長さの一本の棍棒が現われた。
「なんぞこれ?」
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