Episode.2...葬送歌を捧げる真紅.

 アイリーンの二つ名。

 彼女に敵わない理由は、二点ある。

Bossだということの利権から幻影を作り上げることが可能だということ。しかし幻影は一目見ればわかる。Bossである。Boss好みのアイリーンは幻影である。Boss好みでない幻影は実体なのだ。

 だからいつも銃を掲げたときはこう言っている。

 「何故、撃たないか分かるか?」

 「あたしが実体かどうかを疑っているのね。本物よ」

 そういえば撃つつもりである。もう彼女自体何度Bossから自身で幻影であるか、 

 実体であるか言うようにマニュアルで心得ているためである。後彼女は歌を歌ったり、詩を書いたりすることがあるというが本当だろうか。

 一度彼女をバーに連れて行ったことがある。

 シガバーに行くときほどタバコを吸うわけではなかったけれども、注文はいつもMartiniから入る質だった。

 スタンドで歌手が歌を歌っていたマイクを取り上げて、彼女が歌った。

 アウェイクという能力で人の潜在能力を目覚めさせる能力がある。彼女がこれをやけを起こしたときに使うのだ。周囲の人間を玩具にさせるためである。

 バーには大文字陽朗が来ていた。彼は、試験管を扱うみたいに神経質にカクテルグラスにSapphireを持っていた。次描くときのネタを考えているのだろう。

 彼女は線香花火の歌というオリジナルソングを歌った。

 神様、どうか

 声を聞かせて

 マッチを付け火を灯す

 火花を散らし描くのは愛の鼓動

 咲いたのは竜胆の香りと檸檬の花

 めまいがする夜もある

 暖かい彼の胸の中へと向かうのでなく

 潜るのはベッドの中で

 タオルケットにくるまって

 最後に貴方が教えてくれた暗い過去は

 憎悪に値するのは称賛でしかなくって

 夢に咲くひまわりの花畑

 思いよ届け

 咲く花に浮かぶ闇世の銀月は

 涙と焦燥だけ

 あたしの知らないところで

 貴方はきっと

 進んでいる

 あたしのことをどうか覚えていてください

 多分

 貴方は

 あたしの思うだけの貴方という光は線香のように舞い散るのでしょう

 彼女はクリアで繊細な高い少女のような声を出した。大文字陽朗は、次の仕事を考えていたみたいで、どうやら探偵の仕事だったようだ。そこが思い出したらしく。彼はSapphireを半分ほど飲み干すと、Red eyeを彰子にノンアルコールカクテルでジンジャエールにしてお出ししていた。彼女は、一目店の雰囲気に酔っぱらっていた。

 マイクを彰子の方へ滑らせた。彼女は意外そうな顔をして、手に取った。

 Blackbirdという歌を歌った。

 あの氷空が統べる頃

 私は飛びたがっていた

 「このソラは高くない―――?このソラは低すぎる―――?」

 理想に近づくために飛ぶんじゃない

 貴方になるために飛ぶんだってことを

 まだまだ純粋無垢な翼だった

 まだまだ僕は詰って空を仰いだ

 あの空を飛んで滑るように

 低く飛ぶころには君になるよ

 Ahh―――Ohh...

 ありがとう、といった。彼女はアイリーンよりもはるかに歌がうまかった。

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