17話

所で、中学在学中に一生おつき合いする友達が出来た。山ちゃんという友達で、彼女の家も私の家と同じく商売をしている。駅に行く途中にあり、花屋をしている。

家族の年頃も、私の家と似たり寄ったりで、山ちゃんも店の手伝いをしていた。

 私は悩みがあると、自分で考えていないでサッと自転車で山ちゃんの家に行き、お店にいる彼女に悩みごとを言い、そのまま夕ご飯を御馳走になり帰ったりもした。

 中学三年生になると、授業中の目標は受験用になりがちで、就職組はおいてきぼりを食うような気がする。

 私は、地元の女子高校に入る予定で勉強を始めた。他の高校に通う余裕もなさそうだし。

 今の時期‘‘花市‘‘という行事があり、町の中に一夜限りの店を張り、作り物の花や目の無いだるま、神棚などを売る。

 私は前からダルマを買おうとしていたので、自分用のを買った。お金は、毎年お年玉を父から貰うのでそれを貯めていて、少々のお金持ちだった。本来であれば、親や目上の兄弟が買ってくれるのだろうが、家族にはそんな気持ちのゆとりもないらしいので、自分で買って来て、自分で片目だけ入れて、もう片方は私が合格したら入れてあげるねと言って、自分の部屋のタンスの上に飾った。本来であれば神棚に上げるのだろうけれど。事あるごとに手を合わせ、合格を祈った。

 兼吉兄は、どう思ったのか、テレビを買った。それを茶の間に置き、近所の子供達が十人位、毎晩のように来ていたが、私は受験が終わるまで見られない。

 なぜ受験だというのに、テレビを買うか?嫌がらせをしているつもりだろうか。もし私が高校に行けなかったら、それでいいと思っているのだろうか。兼吉兄は何を考えているのかわからない。中卒で家の手伝いをして、一生を過ごさせようとでも思っているのだろうか。女は男に従う者とでも思っているのだろうか?不思議な人だ。

 私は合格した。山ちゃんは元々受験せず、手に職をつけるようにか洋裁学校に行くことに決めていた。勿論家のお店の手伝いをする事も、予定に入っていそうであった。

 お手伝いのキヨミさんが嫁に行く事になった。キヨミさんには本当に世話になった。私達の小さい時からあれこれと、言い出したらきりがない。

 岳夫兄と一緒に実家に行った事もあった。お祭りだからとバスに乗って、連れて行かれた所は、山の中の小さな集落だった。

 家は新しく建てた大きな農家だったが、あいにく風呂がまだ出来てないらしく、広い庭の真中にポツンとドラム缶があり、それが風呂替わりであった。

「先、風呂に入りな」とキヨミさんに言われたが、何をどうして入るのかわからない。

「家から裸になって、缶をまたいて入ればいい」と言われたけど、だって道からも、お客さんからも丸見えだ。

 それでも兄が服を脱ぎ始めたので、私もまねして縁側で裸になって履物だけで、ドラム缶まで行った。

 ドラム缶のふちを越えて入ると、丁度良い加減だった。

 この水はたぶん母屋から運んだのだろうし、火もドラム缶の下で燃やしたのだろう。誰がしてくれたのか知らないが、人の手を煩わせたのだと思うと、ありがたく思った。

 兄と一緒に入ったドラム缶の風呂も、後々大人になったら良い思い出になるのだろう。

 そのキヨミさんが嫁に行ってしまうのだ。少し寂しかった。

 今までお手伝いさんがいないときはなかったから、また誰か来るのかな、くらいには思っていた。

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