12話
中学校は家からだいぶ離れていて三十分は歩かないとつかない。幸い近くに住んでいる孝子さんという同級生と学校へ通い始めた。
中学は進学クラスと普通クラスがあって、特に英語の授業は、進学クラスは先に進んでいくらしい。
孝子さんとはクラスが違ったが、毎日、行きも帰りも一緒だった。そして孝子さんも私もあんまり話す事もなく、モクモクと歩いて学校に行った。
勉強も難しくなり、中間、定期テストがあると、学校中同じなので、中三の岳夫兄も同じ日にテストがある。
いつものように店番をしていると
「オレが店番するから、勉強しろ」と兄が言う兄は店に勉強する物を持って来て、私と替わってくれた。
私は二階の勉強部屋に行くが、一向に身が入らない。———まあ、このくらいやればいいか。———そんな感じである。
テスト期間であろうとなかろうと、
「ヒサ子に付いて行け」といわれると映画であろうと、友達とお茶飲みに行くにも付いて行く。親に逆らう事はなかった。それがテスト中であってもである。
映画館に行くと、風紀係の先生が、見廻りに来る。よもやテスト中に、我が校の生徒はいなかろうと思っている先生の前に、顔をさらすことは出来ない。姉にそう言って顔を隠す。
姉は面白がっているが、少しは協力してくれた。
私がしっかりしていればいいと思っていた。が、どう思っているのだろうか。ヒサ子姉には、両親の言う通りに動く私に、じゃま以外のなにものでもないのだろう。
そんな風にすごしていた時、ニュースが飛び込んできた。ハルオさんが、中学の修学旅行に行けなくなったらしい。
「どうして?」 私は父に聞いた。
「なんでも店のキャラメルを取ったんだって」
「取ったって? ハルオさんは修学旅行なんだろ。キャラメルのひとつ位、持たせてあげたって」
「やったのと取ったのは違うよ」
「だって!」
私は理解できないまま、ただハルオさんがかわいそうでたまらなかった。
結局、ハルオさんは修学旅行に行けなかった。行ってはだめとおじさんに言われた様だった。父も
「何と情けない」と言うきりだった。
ハルオさんは、中学を卒業すると、本宅の家を出て働き出した。と聞いた。
二番目の兄好男が、夏休みで帰省すると、連絡があった。 私は汽車の時間を見て、駅まで迎えに行った。自転車で行き、小さな駅の改札の前で待っている時の、なんとうれしかった事か。汽動車が来て、兄が降りる姿が見えると、私は手を振って向かえる。帰りは兄の荷物を自転車に乗せ、自転車を押して帰る。近況報告しているうちに家に着いた。
夕食後、母が寝る部屋になかなか行かないと思っていたら、母は好男兄と一杯やりたかったようでコップとビールがいつの間にか用意してあった。
母は好男が好きなんだ、と今頃になってようよう分かるようになった。兼吉兄とは未だかつて酒など一緒に飲んだためしがない。
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