第4話
「……ん?」
「あ、通知来たね」
次の日、約束通り在原を素材収集引き回しの刑(流石に可哀想だったので30分だけにしておいた)に引き連れ回したあと、メリィちゃんからダラダラしない?とのお誘いのチャットが来た。
二人でゲーム内に買ったプレイヤーホームにて、二人で雑談に勤しむ。別ゲーの話もしていたら時間もあっという間に経ち、今日のイベントバトル30分前の時間となっていた。
「緊クエ……『絶望に引き込む大海』……クラーキングだね」
「レイドかぁ……どうする?行く?」
スティックヒューマン・オンラインでは、毎日夜9時になると、イベントバトルが開催される。
種類としては、ストーリーシナリオの章別のボスであったり、防衛クエストだったりと様々である。
今回のクエストは、スティックヒューマン・オンライン第二弾大型アップデートで追加されたシナリオのラスボス、大海の覇者クラーキング。
簡単に外見を説明するのなら、めちゃくちゃでっかいイカの王様である。恐らく────というか、絶対モチーフはクラーケンなのだろうが、触手が80本あるのですっごく気持ち悪い。
初見で挑んだ時の「きゃぁぁぁぁ!!」というメリィちゃん叫び声に、鼓膜がやられたのも懐かしい話だ。
「行く?」
「行かないーー!!!」
叫び声が聞こえるのは分かっていたことだったので、メリィちゃんの声が聞こえる前にヘッドホンを外した。
「みぃくん分かって言ってるでしょ!私がクラーキング嫌いなこと!」
「うん」
「うん!?」
それはそう。なんなら俺も嫌いだし、公式の『ユーザーに人気なモンスターランキング』ではコイツ、堂々の最下位だったしな。一票も入ってないのは流石に大爆笑ものだった。
「いじわるっ!みぃくんのいじわるっ!」
「……………」
あぁ……!かわえぇ……!好きだ。本当に好きすぎる。
実を言うと、俺はメリィちゃんの事が好きなのである。当然、LIKEの方ではなくLoveの方。メリィちゃんを、しっかり異性として好きなのである。
顔も知らない、性格もあまり分からない。互いに知っているのは、声とプレイスタイルだけ。
人によってはバカバカしい等と思うかもしれんが、舐めるんじゃねぇ。メリィちゃんメッッッチャくちゃ声可愛いんだぞ……っ!
あと、ボイチャだけでもわかるほどの性格の良さと優しさ。喜怒哀楽も声だけではっきりしており、想像だけど、どんな感じのリアクションを取っているのかも分かる。
机に両肘を付き、手を組んでいるところに額を当てて、メリィちゃんの可愛さに耐える。危ねぇ危ねぇ。ついつい口から本音が漏れ出る所だったぜ……。
「所で、本当にクラーキング行かなくていいの?武器素材の強化アイテムとか、レアアイテムとか、狙ってるもの────」
「ないもん」
「────ん?」
「ないもん。今使ってる盾と槍を強化するための素材はドロップしないし、装飾品の類は別にクラーキングじゃなくてもいいし、このクエだけ異様に人少ないからマッチングにも時間かかるしそんなの行くくらいだったらみぃくんとお喋りしたいし、ほかのクエスト言ってる方が全然マシだもん」
「……お、おう」
長文早口詠唱だったな。後半なんて言ってるのか全く分からんかったわ。
「そんじゃ、俺も行くのやめよっかな」
「……別に、私に合わせなくてもいいんだよ。琥竜クエで落ちた新しい主武器の強化アイテム、落ちるでしょ?」
何でメリィちゃん俺の新しく手に入れた杖の強化アイテムが落ちるイベクエ把握してるの?あれか、人間って俺含めて嫌いなものほど調べようとするからな。もしかしたら落ちる素材を丸暗記してるのかもしれない。
二度と行かないために。そのアイテムが必要にならないために。
「まぁ、そうだけど……俺にとって大事なことは、メリィちゃんと一緒に居ることだからな」
本音を言うならば、好きな人と一緒に会話をしていたいということなのだが、それはさすがに恥ずかしくて言えない。可愛い、とかだったら平然と言えるんだけどな。顔合わせてないから。
「………うみゅ」
「メリィちゃん?」
「にゃっ……!ちょ、ちょっとごめんね!ミュート!」
「あら」
ブツっ!とヘッドホン越しに通話が切れる音がした。
長年、この声を聞いてきた俺なら分かる。これは、時々ある俺の無意識な発言に恥ずかしくなり、照れてしまって顔に溜まっている熱を冷ましている反応だ。
ふむ、どうやら何がしかの俺の発言がメリィちゃんにクリティカルヒットしたらしい。どれだ……?
しかし………。
「はぁ……かわぇぇなぁ本当」
まじで、可愛いの暴力が過ぎる。
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最近ガ〇ダムSEEDが話題になってるから、PSPでガンダ〇SEEDのゲームしてます。どうも私です
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