第2話

「充!昨日はよくやったな!」


「はよ、在原。それとさんくす」


 俺の名前は早川充はやかわみつる。ゲームが他人よりも好きな高校二年生である。造形は、黒髪黒目のThe日本人顔。在原曰く、顔面偏差値はかなり高いらしいが、告白された回数は0回だ。まぁ、たまに教室で奇行を晒してるからしゃあないっちゃしゃあない。


 そして、今先程俺に声を掛けてきたのが、ゲー友である在原剛ありはらつよし。現在、俺がハマっているゲームである、スティックヒューマン・オンラインをたまに一緒にやる仲である。


 スティックヒューマン・オンラインとは、名前の如く棒人間を己の分身とし、操作するMMORPGである。


 最初は、操作するキャラが棒人間でということが斬新すぎて、「なにこれ?」的な感じでゲーマー界の中で囁かれていたが、いざ蓋を開けてみるとかなりの神ゲーであった。


 通信障害はほぼナシ。ラグも無く、ストーリーも面白い、グラフィックも棒人間以外は超綺麗という謎バランスにより、大人気となった。


 完全レベル制、課金要素はほぼ無し。ガチャもなく、装備品は全てモンスターからのドロップオンリー、そして運営の神加減から、絶大な支持を得ている。


 課金要素と言えば、ちょっとしたアイテムとか、ドロップが良くなるバフくらい?本当に、よく運営回していられるよな。もうサービス開始から五年経ってるんだぜ。


「羨ましいなぁ。コンビを組んでる相方がいて。野良じゃ琥竜なんてクリア出来ないよ……」


「当たり前だろお前……。俺とメリィちゃんでさえ何回挑戦したと思ってるんだ」


 連携だったらこのゲーム1と言われている俺らでさえこんなに苦戦したんだ。野良じゃ無理に決まってるでしょ……。


 難易度調整待ってます運営さん。


「俺と、お前でボイチャ繋ぎながら行っても無理?」


「無理。在原まだレベル140だろ?レベルキャップまで上げてから言ってもろて」


 現在のレベルキャップは150まで。せめてそこまで欲しいよな。まぁ連携の質が違いすぎてそれでも無理だとワイトは思います。


 あのクエ。適正レベル130とか言ってるけど絶対に無理だから。


 このゲームは完全レベル制と謳ってはいるが、普通にプレイヤースキルも影響するからな。行くとしても、失敗前提になっちゃうからな……。


「この廃人め」


「ガハ」


 ごめんな。それは褒め言葉にしかならないんですわ。





 昼休み。弁当を速攻で胃袋に書き込んだ俺たちは、現在スティックヒューマン・オンラインのホームページに上げられる、昨日のMVSの動画を見ていた。ちなみに、モスト・ヴァリアブル・スティックヒューマンの略な。


 これの更新時間は、昼のため、学校ではこれを見るというルーティーンが出来上がっている。


「やっぱ載ってんなぁ。予想通り」


「昨日めちゃくちゃ頑張ったからな。逆に載ってないと困るというか……」


 上げられている動画を再生する。視点は……俺のか。ラスボスである琥竜との戦闘画面が切り取られていた。


 落ち着いているからこそ分かるというか、あの時はいっぱいいっぱいだったから気づかなかったというか、こうして見ると、新たな気づきもあるというものだ。


 あ、ここちょっとチキってる。もうちょい早く攻撃できたろ。


「きっも。何だこの完璧な連携……」


「ボイチャしてるし、何年組んでると思ってるのよ。これくらい朝飯前────あ、別にここ違う魔法で良かったな」


「は?まだ研究すんの?」


「当然」


 ここから更に効率化していくのが楽しいんでしょ。RTAと一緒一緒────お、メリィちゃんからLI〇E来た。やっぱそうだよなそこもうちょい詰めれたよなぁ。


『今日また行って確認する?』


『するー!』


 何だこの生き物。文字だけで可愛いとか反則だろマジで。


「………はぁ。いやマジで感嘆のため息しか出ねぇ。流石は『双棒』だな」


「やめろ。その二つ名は俺に効く」


 スンッ、と真顔になる。


 双棒。俺とメリィちゃんがコンビで様々なクエストを攻略しまくり、いつの間にか付いていた俺たち二人を表す二つ名。マジでだせぇ。しかもこれ、公式公認なんだぜ……?


 本当にだせぇ。これ聞いた時、メリィちゃんも「えぇ……」って引いてたからな?


 だって……ねぇ?双棒て。他のトッププレイヤーと比べたからクソダサだよマジで。他の人はさ、『明鏡』とか『一刀』とかクソかっこいいのに。当時は二人揃ってガチ凹みし、二日間くらい慰めあったのも懐かしい記憶である。


 今?今はもう諦めたよ。


「……いや、マジでえぐいわコレ。流石充様みぃ様双棒様って感じだわ」


「ぷっつーん。はい君は今地雷を踏みました。明日はドキドキ!エリクサー素材収集引き回しの刑な」


「すみませんでした!それだけは勘弁してください!」


 諦めたとは言ったが、弄っていいとは一言も言ってねぇんだわ。大人しく俺の収集に付き合ってくれや。




ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

始まるんだ。俺たちのこえよめが……!


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