第1話
カタカタカタと、持っているコントローラーが激しく音を鳴らす。それに応じ、画面内のキャラクターが俺の操作に反応し、巨大なティラノザウルスみたいなモンスターの攻撃を右へ左へと回避する。
次に、右足を大きく後ろへ下げたことを確認し、前線でタゲを取っている相棒に、警告の声を出す。
「メリィちゃん右から!」
「うん!」
敵キャラの起こりから、どんな攻撃が来るのかを予想する。そして、予想通りの尻尾ぶん回しの攻撃が、今にもポッキリと折れてしまいそうな棒人間の体へと向かう。
だが、我が相棒はギリギリまで攻撃を引き付け、持っている(どうやって持っているかは謎)タワーシールドでしっかりとジャストガード。尻尾は弾き飛ばされ、恐竜の体が大きく仰け反る。
およそ二秒ほどの
「みぃくん!」
「OK!」
耳に着けているヘッドホンから、相棒の声が響く。それに対し、高速でコマンドを入力することで応え、奥義を発動させる。
棒人間なのに、カッコイイカットイン演出が入った攻撃魔法が恐竜へ襲いかかり、残り二割だったHPを纏めて消し飛ばした。
ボスはポリゴン状に砕け散り、先程まで恐竜がいた場所には、『Congratulations!!』の文字が現れた。
「「………いやっっっっったぁぁぁぁぁぁ!!!」」
耳元で叫ぶ相棒と、同じタイミングで叫ぶ。興奮のあまり勢いよく立ち上がり、ゲーミングチェアが音を立てて倒れた。
「史上初!史上初クリアだよみぃくん!!」
「あぁ!本当に────」
ぬぅわぁぁぁぁ……と疲労と緊張から解き放たれた声が自然と漏れ、ぐでーと机に体を投げ出す。ほ、本当に疲れた……!
倒れたゲーミングチェアを起こし、しっかりと背もたれに背中を預けながら、今回のクエストダンジョン────2人限定最高難易度である、『琥竜の雄叫び』というクエストで手に入ったログをだらーっと見ていく。
「お疲れ様、メリィちゃん」
「うん。みぃくんもお疲れ様」
パン!と画面内で棒人間がハイタッチをして、ダンジョンの外に自動転移し街に戻る。その瞬間、チャットログに大量の『おめでとう!!』という俺たちを祝福する言葉が高速で流れる。
それに対し、『ありがとう!』とチャットではなく、吹き出し状にしてからお礼を告げる。
「わわっ、皆すごい早いね」
「実装されて一ヶ月経つのに、まだ誰もクリア出来てないクエストだったからねぇ。常にコンビで動いていた俺らでさえ、20回以上の試行回数の上でクリアだ」
ギミック、敵キャラの強さ、攻撃パターンの多さ、連携などなど、ある程度コンビプレーに慣れていないとクリア不可の超絶ダンジョン。恐らく、このゲームで一番連携が上手い俺と相棒のペアでさえ、たくさんの試行回数を重ねた。
一度、クリア出来なさすぎて、相棒が駄々を捏ねたのは内緒である。
チャットが落ち着くまで待機し、流れがそこそこ遅くなったタイミングでプレイヤーホームへ帰宅。ヘッドホンからドタッ!という音が聞こえたので、恐らくメリィちゃんが机にもたれたのだろう。
「はぁ……疲れたぁ……」
「今日はもうなーんにもやる気がおきないや」
手汗がすんごい。後でウエットティッシュで拭いておかないと。
「それじゃ、今日はもう
「うん。精神力がない」
「分かった!じゃあ私も落ちるね」
バイバイ、と耳元で優しく言ってくれた後、棒人間のエモートでも、バイバイ!と手を振って落ちていったメリィちゃん!なんでだろうな。棒人間なのにあんなに愛嬌を感じるのは。
メニュー画面を開き、俺もログアウトを選択。『see you play again』の文字が出てから、タイトルに戻った。
「………あー……」
ヘッドホンを外し、机の上に置いてから、ベッドになだれ込む。ポケットからスマホを取り出して、SNSアプリである紫色の鳥がアイコンの『ツブヤキテー』を開く。
「……あ、もうメリィちゃんが勝利報告してる」
『琥竜攻略!すんごい疲れた!』というツイートが一番上に出てきた。俺らと同じゲーマー達が、直ぐにええやんとリツブヤキテーが量産されていく。
……俺も投稿するか。
眠気と戦いながら、何とか俺も投稿を完了する。メリィちゃんが直ぐにええやんを押してくれたのだけは気づいたが、もう限界だった。
おやすみ。
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こえよめでさ、改訂版出すって書いてあったんだよね。
じゃあもう出すしかないじゃんってなったよね……。
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