百文の一(いち)

ねくしあ@カクコン準備中……

新着メッセージがあります:

 ある日、世界の人々全てに異変が起こった。

 それは「人生にたった一度だけ誰か一人の秘密を知ることが出来る」というものだった。


 だけれど一つ条件がある。それは――互いの同意が必要という大きな枷。


 ――私には大好きな先輩がいた。今はもう二月の下旬で卒業まで時間がない。でもその思いを伝えられずにいた。


 私はいつも意気地無しだった。だから今日こそは、と思いラインを送ってみることにした。

 激しく鳴る鼓動と浅くなる息。それを感じつつも震える指で画面をなぞり、一文字ずつ丁寧に、丁寧に言葉を、文章を作っていく。入学試験で面接をしたときよりずっと慎重な気がしてしまうほどに。


『あの、先輩。明日の朝に会えませんか? 話したいことがありまして』

『突然どうしたの? まぁ、別に空いてるしいいけど。何時にどこ?』

『六時に百山公園でいいですか?』

『いいよ。ちゃんと来るんだぞ~?笑』


 その会話は数十分にも満たなかったはずだ。でも私にとっては数時間に感じた。返信の遅さにイラつかれてたらどうしよう……そう思うとなんだか眠れなかった。


 そして朝。ご飯もろくに食べず、間に合うようにと寒い中で身体を必死に動かし公園まで足を進める。


 運動をして、身体はしっかりと暖まった。しかし震えが止まらない。きっと寒さのせいだろうと意味もなく言い訳をしてみる。そうでもしないと頭が景色と同じくらい真っ白になってしまいそうだった。


 よく待ち合わせ場所になっている時計台の前にその先輩はいた。既に私と同じ制服姿だった。


「お、来たね。で? 要件はなんだい」

「……先輩、秘密を教え合いませんか」

「……なんだい藪から棒に。いいのかい? 人生に一度の権利なのにさ」

「先輩がいいんですっ! そ、その……嫌ならいいですけど」

「嫌じゃないさ。いいよ、したげる」


 原理は分からない。でも皆が言うには――世界が気持ちを認証した、ということらしい。突然脳裏に文字が浮かんできた。


「「大好きっ……!」」


 その言葉は同時だった。そしてそれにまた驚く。


「私、先輩の事が大好きです!」

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