3枚目

 ひとつ断っておきたいのは、私はもう一度人生をやり直してこの時々の選択を変えたいと思っているわけではない、ということです。


ピアノに費やしていた時間を勉強に充てたことで出会えた様々な知識。この勉強のおかげで進学できた高校での経験。吹奏楽の強豪校ではきっと出会えなかった、多様な感性を持つ高校の同期との邂逅。理系に進んで実感した理数系科目の奥深さ。


 これらを他の人生と引き換えに手放すことは私にはできません。


 それなら納得して前に進め、との声が聞こえてきそうですが、自分なりに整理ができた 納得したと思っても、眠れない夜にはどうしても考えてしまうのです。そしてそれはきっとこれからも続いていくと思います。理系の専門家である父親に「○○は文系に適性があると思うんだけどなぁ」と言われたことを、いつかまた、うまくいかなかった時には思い出してしまう。これはもうどうしようもないことです。

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