第4話

 久しぶりに晴れた朝のことだった。ベランダから声が聴こえてきた。私は、長い間閉め切っていた窓を開けた。夏の匂いが私の鼻をかすめ、視界に鮮やかなレモンイエローが飛び込んできた。足を怪我したセキセイインコだった。


「かなしい、かなしい、つらいね、つらいね」


 きっと飼われていた家で覚えた言葉なのだろう。感情を失った私の目から涙が滴り落ちた。私は、その子に、歌鳥かとりという名前をつけて一緒に暮らすことにした。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る