第13話
隣のベッドにいる雪乃の甘い喘ぎ声が、一段と大きく私の耳を貫いた。ずっと見ないようにしていたのに、対面座位で抱き合う二人の光景を一度見たら、目が離せなくなった。
雅哉が、私の愛おしい人が、頭を雪乃に抱きかかえられながら、雪乃の大きくて色白な胸の先を食んでいる。
私ではない女の中に、私が欲しくてたまらなかった塊を出し入れしている。初めて見る裸の広い肩と筋肉のついた腕を見るだけでドキドキするというのに、八年来の友人の雪乃とセックスしている。
目の前で繰り広げられているのは、愛おしい人と友達をいっぺんに失った光景なのだろうか? 新しい世界の入り口に差し掛かっているのだろうか?
どちらにせよ刺激が強すぎて、狂うのではないかと思う。雅哉が乳首から唇を離した。華奢な肩と腰に手を置き自分の腰を前後に動かしながら、その柔らかい唇を雪乃の唇に押し当てた。
二人の舌が絡み合う。私の視線に気づいたのか無表情にも悲しそうに見えた雅哉の瞳が狩人のような光を取り戻し、激しいキスを繰り返しながら私を見つめる。
雪乃を抱きしめ、自分の分身で雪乃を喜ばせながら、他の男に身体をいじくり回され、混乱と傷心と快感で泣き声のような嬌声をあげる私を見つめている。
出会った時と一緒だ。いつもこの瞳が私を狂わせる。地獄へたたき落としてほしい。私にはその資格がある。
ウエーブの黒髪が、正常位で私の中に入ってくる。まともに話したこともない男に抱かれているのに、私の中心がしびれて熱さを増す。
キスをされそうになった瞬間、目を閉じて、雅哉を感じる。ウエーブの黒髪は雅哉だと妄想する。あなたがしてくれないなら、せめてあなたを感じること位は許してほしいと願う。
するとなぜか、自分が雪乃になる。そして自分の快感が深ければ深いほど、自分の存在が希薄になり雪乃としての快感を深く感じる。混乱と快感で脳がおかしくなる。
私の嬌声に、雪乃の絶頂を迎えそうな声が重なる。気がおかしくなりそうな一歩手前なのに、なぜかマンネリの生活や将来に対する漠然とした不安を殺してもらえたような安堵感をも感じる。
崩壊と再生。そう、生きている実感。辛い悲しいもうこんなところから逃げ出したい……心が何度もそう叫んでいるのに帰巣本能のようにこの快感に戻ってきてしまう。
もうこれ以上私を見ないでほしい。でも私を見てほしい。吸われたり噛まれたりしやすいように硬く尖ってしまった乳首も、だらしなく液体を垂れ流し続ける泉も、とめどなく快感を求め続ける貪欲な蕾も。
でも雅哉、どうして私とだけはしてくれないの? してくれなかったの? 一回でもしてくれていれば、こんな怪物にはなっていなかったかもしれないのに。
ウエーブの黒髪が、うめき声をあげ全身を震わせた。私はあともう少しだった。目を開くと雪乃はベッドで目を閉じており、雅哉の姿はなかった。
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