第11話
世界からお暇するのが早くなった太陽がすっかりその存在を消したころ到着したのは、周囲を白樺で囲まれた巨大な別荘だった。
ワインを飲みすぎた私はその場に倒れ込みそうになりながらも、雅哉に支えられてピンヒールを脱いだ。
高い吹き抜けの玄関を経て通されたのは、赤と黒を基調にした百平米ほどの薄暗い部屋。壁面に明らかに高級と思われる革張りのソファが何台も置かれている。
マンション二階分はあろうかと思う高い天井。部屋の所々には趣味の良い観葉植物や間接照明が置かれ、暖炉まである。
壁にかかっている巨大なプロジェクターでは、ラグジュアリーなプールサイドで、複数の金髪女性が黒人男性らに犯されている映像が流れていた。
深紅の絨毯かと思い一歩足を踏み入れると、フワフワした感触。子供が遊ぶプレイルームに敷き詰められた、柔らかいマットのようだった。
部屋を見渡すとTVでたまに見る脇役専門の女優や、いつの間にか消えていた坂系アイドル、最近単体ものから団体もののパッケージで見ることが増えたセクシー女優など、裸の男女が部屋のあちこちで入り乱れ絡み合っていた。
部屋の真ん中辺りで、後ろから両胸をもまれながらディープキスをしているのは雪乃だった。誰に呼ばれてきたのだろう。驚きで身体が硬直する。あまりに現実感が無く、ワインの酔いもあってくらくらする。
部屋の奥にはカーテンのかかった小部屋があった。中には三台のキングサイズのベッドが隙間なく並んでいる。
雅哉が飲み過ぎて立っているのもやっとの私を見つめ、頬を何度か撫で、顔をゆっくりと傾けた。
唇が触れたか触れないかわからないようなキス。首に右腕を回され、抱き寄せられる。一瞬雅哉と過ごした夏の日が蘇り、妻子がいても雪乃と会っていても、やはり好きだなと思う。
少し乱暴に雅哉の鼻先が耳元に触れ、雅哉の切ないような吐息が鼓膜を刺激する。同時に雅哉の左手が、私の敏感な背中や腰を這い回る。
「ねえ、かわいい」今まで聴いたこともなかったささやき声が、私の全身を蕩けさせた。
迷い、恐れ、自己憐憫、陶酔……私には手に負えない様々な感情が、彼の唇が私のあちこちに触れる度に体内を駆け巡り、それぞれの感情がくっついたり離れたり不思議な化学反応を起こす。
背中が寒くもないのに震え、乳房が張り乳首が硬く膨れ、ブラの中で苦しい。そして彼に対する本能か欲望か愛情か執着によるものか結論の出ない淫らな思考が現れ、物理的には体液が心理的には想いが、溢れてきてしまう。
雅哉が私のキャミソールワンピの肩紐を口で食み、二の腕に落とした。キスをしながら背中の指をゆっくりと這わせ、反対側の紐も落とす。
片手で簡単にブラのホックまで外され、思っていた通り遊び慣れている雅哉の腕を拒絶しようと思う。
が、酩酊し混乱し、あの満月の夜から開いたままだった私の身体は、封印していた熱を思い出してしまう。
ブラやワンピが足元に落ち、雅哉が大切なものを取り扱うかのようにゆっくりと、両手で私の身体をベッドに横たえた。大きな手で頭を撫でられながら、再び唇が唇に重なる。
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