きっかけ
ヤンデレストーカーがお茶の湯大学に通う良家の娘だった。
たとえ、そうであっても彼女は彼女であったと一瞬で白けた朝陽は、だがしかし。
「なぁ?なんで、お前……僕のこと好きなん?」
彼女が良家の娘だからこそ、実に今更ながらの疑問を思い浮かべていた。
「お前が低能で大した学もない低IQだと言うのならば、脇目もふらずに犯罪行為へと手を染めていたとしても、そこまでの違和感がないのだが……お前がちゃんと学のあるお嬢様ならば、なんでこんなことを?」
何故、しっかりと教育を受けたはずのお嬢様が犯罪行為などしているのか。
そして、上級国民である彼女がどこで自分との交流を得て、自分へと恋愛感情をむけてきているのか。
相手が、しっかりとした相手なのであれば朝陽とて忘れていないはずなのに。
「……うぅん。やっぱわからん。なんで、僕のこと好きなの?きっかけは?」
中学生から今に至るまで、朝陽の記憶の中にヤンデレストーカーの姿はない。
本当に急な形でポップしてきたのだ。
「……え?い、今更?」
何もない平和な平日のお昼ごろに。
本当に唐突な疑問をぶつけられたヤンデレストーカーは首をかしげて疑問の声を上げる。
「別に、今までは興味なかったし」
朝陽にとって、ヤンデレストーカーはどこまで行っても自分にとって害になり得るのことない見てて面白い奴だったのである。
「よくよく考えてみれば、ここでの対応次第で僕の今後が変わりそうな気がした」
だがしかし、ヤンデレストーカーが超がつくほどのお嬢様であれば?
金持ちになることを望む朝陽としてはお嬢様である彼女と敵対するのは出来るだけ避けた方がよいかもしれない。
そんな考えが出てくるのは至極当然であった。
「別に朝陽くんは何もしなくとも、朝陽くんは望むのであればなんでもするよ?お父様は私に甘々だし、色々な業界の各方面にも顔が利くし、何でもできると思うよ」
「……おぉう」
上級国民だからこそ持つ圧倒的なコネの力。
それを目の当たりにした朝陽は思わず動揺の声を漏らしてしまう。
「それで話戻るけど、なんで僕のことが好きなの?」
「……覚えていないの?」
再び戻ってきた朝陽の疑問にヤンデレストーカーは頬を膨らませながら答える。
「毎日のように、私の家に来て歌を届けてくれていた日々のことを」
ヤンデレストーカーにとって、己の人生の今後を変えた大事なきっかけであり、今なお薄れることのない彼女の大切な記憶。
「何それ知らん」
「ふぇぇぇぇぇぇぇええええええええええ!?」
それを一瞬でぶった切った朝陽の言葉に彼女は驚愕の声を上げるのだった。
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