女子大

 歴史ある名門大学であり、選ばれた才女だけが入学することのできる女子の園のであるお茶の湯大学。


「……あ、あり得ない」


 その大学の校門に、無駄に面の良いの一人の男子高校生が不審者の如く体を震わせて立っていた。


「あ、あれが……ヤンデレストーカー?」


 そんな男子高校生、朝陽の視線の先にいる人物。

 それは、多くの女子大生に囲まれてキラキラしている彼女の姿であった。

 ヤンデレストーカーがお茶の湯大学に通う女子大生ということを知った朝陽は信じられないという気持ちを抱きながらこっそり彼女の大学での姿を見に来たのだ。

 どうせ、嘘だし……嘘じゃなくても、ボッチの可哀想な子だろうと。


「あら、髪を切ったのね?随分と似合っているわ。一段と輝いているわ」


「本当ですか!?お姉様!私、感激ですわ!」


「ふふっ、それなら良かった」


 だがしかし。

 多くの女子大生に囲まれて羨望の視線を向けれている正に真正のお嬢様。

 陽の光を浴びてキラキラと輝いている白く、綺麗な髪を持つヤンデレストーカーを前にすれば、彼女が本当に良家の娘であると信じざるを得ない。


「う、嘘だ……」


 だがしかし。

 それでもやっぱり朝陽は実際にその目で確かめても、どうしてもこれが真実であると呑み込めていなかった。


 朝陽の知るヤンデレストーカーとは、多くの犯罪行為に手を染める犯罪者であり、ヤンデレであるくせにドジっ子でやることなすことすべてうまくいかない少女なのである。

 そんな人物が……多くの女子大生に囲まれて?羨望のまなざしを向けられている?


「こ、これは夢か……?」


 そして、朝陽が辿り着いた答えは夢。

 ここが夢であるという幻想であった。

 朝陽が目の前の光景を前に呆然としていた、そんな折。


「……っ!?あ、朝陽くん!?」


 ヤンデレストーカーが校門付近で震えていた朝陽に気付き、声をあげる。


「……何方ですか?」


「な、何でしょう……あの殿方は」


 それに伴って彼女の周りにいた他の女子大生の視線も朝陽へと集まってくる。


「……あっ」


「な、何のよ……あっ!?」


 今いる状況がそこそこヤバいということに今更気づき、慌て始めた朝陽。

 そんな彼の元に駆け寄るべくヤンデレストーカーが足を一歩踏み出す……その瞬間であった。


「ふぇぇぇぇぇぇぇええええええええええ!?」

 

 石畳の上で足を滑らせ、そのままつるんっ!とすっ転んで頭を強く地面に強打し、目を回して気絶してしまう。


「お、お姉さま!?」


「大丈夫ですか!?」


「ちょっ!」


 いきなり転んで気絶してしまったヤンデレストーカーの周りに他の女子大生が集まっていく。


「……帰るか」


 たとえ、どこにいてどんな経歴であろうとも彼女は彼女であると再認識した朝陽はすっかりと拍子抜けしたような表情で帰路へと着くのだった。

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