良家

 あくる日の朝陽が住むマンションの一室。


「ふんふんふーん」


「……私が買った盗聴器がぁ。そこそこ高かったのに」

 

 朝陽は自分のスマホに表示されている売り上げ金を見てほくほく顔を浮かべていた。


「もうけ、もうけ」


 そのスマホに表示されている売り上げ金。

 それは朝陽がヤンデレストーカーの盗聴器を売り飛ばして得たお金である。


「……まぁ、でもこんなに朝陽くんが喜んでくれているなら結果的には良かったかな?それにしても、そんなにお金欲しいの?」


 あっさりと盗聴器に対する未練を捨てたヤンデレストーカーは朝陽に疑問の声を上げる。


「いや、別にそんなお金が足りないわけでもないが……僕には色々と出費が必要になるし、出来れば世界の長者番付に乗るほどの金持ちになりたいのでね。金は一円でも嬉しい」


「……なるほど!それじゃあ、おいおい朝陽くんは企業したりするわけだ!」


「出来ればねー」


 実のところを言うと、朝陽はかなりの金持ちと言える。

 未だ高校生でありながら、同人作家、歌い手、ボカロPなどの顔を持って活動し、かなりの金額を稼いでいる。

 だが、それでも世界の長者番付はあまりにも遠いが。


「起業するときになったら私にも教えて!手伝ってみせるわ!私の方でも別の活動もしているんだけど……朝陽くんのためならなんだって出来るわ!」


 そんな朝陽の言葉に対して、


「お前が役に立つとは思えないんだけど」


 だが、そんなヤンデレストーカーに朝陽が向けるのは疑惑の視線である。

 彼の知っている彼女はどうしようもないドジっ子、決して役に立つとは思えなかった。


「えっ?これでも私はお父様が起業家でそこら辺のイロハも教えられているわよ?それにしっかりと偏差値の高い大学に通っているのよ?」


 されど、ヤンデレストーカーはただのドジっ子というわけではない。


「……お前、どこのに大学に通っているの?お前が受験で合格している様が思い浮かべないのだけど」


「私はお茶の湯大学に通っているわよ?まぁ、幼稚舎からエスカレーター式に大学へと入学しているから受験はしていないのだけど」


「……は?」


 お茶の湯大学。

 それは言わずと知れた女子大学の中でも最高峰であり、そんなところに幼稚舎からのエスカレート式に大学まで進学している者など良家のご息女やお金持ちのお嬢様くらいなもの。


「はぁぁぁぁぁぁ!?」

 

 ストーカーなどの犯罪行為を行うドジっ子犯罪者は紛れようもないお嬢様である。

 そんな事実を前に朝陽は目を見開いて驚愕の声を上げるのだった。

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