メ〇カリ

『なにこれ』


 ヤンデレストーカーがトリップしている間に、朝陽はその足を止めて疑問の声を浮かべていた。


『……どう考えてもあいつだよな。盗聴器でしょ、これ。それにしては大きいような気もするけど』


「ふぇ?」


 そして、トリップしていたヤンデレストーカーは足を止めた朝陽の続く言葉によって現実へと立ち換えさせられる。


「な、なんで……」


 わざわざ音を拾いやすい超高性能な盗聴器を高い金を出して買ったというのに、なぜバレてしまったのかと呆然と声を漏らす。


『いや、普通に隠せよ。自分の覚えのないものがコンセントに刺さっていたら誰でも気づくに決まっているだろ。流石に馬鹿過ぎるぞ』


「……ぁ」


 ヤンデレストーカーはどうしようもないほどのアホであった。

 しっかりと聞きとれるかどうかが心配で心配で、そこにばかり注意していたせいで

肝心の盗聴するために隠すという行いを忘れてしまっていた。


『……どれだけドジなんだよ、あいつ』


「うぅ……」


 あまりにも初歩的すぎるミスを犯してしまったヤンデレストーカーは羞恥心で頬を赤らめて俯いてしまう。


『ふんふんふーん』


 彼女がそんなことをしている間にも朝陽は勝手に何かの作業を進めていく。

 手に持っていたスマホで盗聴器の写真を撮り、手際よくスマホを操作していく。


『メル〇リに登録っと』


 そして、朝陽が告げたのは驚愕の言葉であった。


「……えっ?」


 ヤンデレストーカーは自分のつけているイヤホンから聞こえてくる想像の斜めを上を行った朝陽の言葉に思わず顔を上げて驚愕の声を漏らす。


『それじゃあ、明日。その手にある盗聴器を僕の家にまで持ってきてね。メル〇リに出品したから。それと、流石に盗聴されるのは嫌だから僕は別のところに一泊するから、この後にすぐ家に来ても無駄だよ?』


 未だにヤンデレストーカーは朝陽の家の合鍵はもっていない。

 何度も作ろうと画策しているのだが、その計画が上手くいったことは残念ながら一度もなかった。

 

 ヤンデレストーカーが盗聴器を仕掛けられたのはたまたまマンションのエントランスを通れて、たまたまその日に朝陽が鍵をし忘れていたからだ

 彼女が三か月くらい忍び込めるタイミングを計って、ようやく出来た盗聴器作戦なのである。


「あっ、はい」


 その計画があっさりと潰え、自分が高値で買った盗聴器を当の本人に出品されるという結末で終わってしまったヤンデレストーカーはただ一言。

 誰にも聞かれないと知りながら一言漏らすことしか出来なかった。


 

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