春を告げる者たち (KAC20247)

 ふわり、ふわり。

 冬の寒さが緩み、暖かくなってくるとは活動を始める。


 ふわり、ふわり。

 それは自分たちの本能に従って、しかるべき時を待つ。


 やがて強い風が吹く。

 寒い冬の間は、必死には自らの中に縮こまっていたが、もう冬の気配は去りつつある。

 つまり、が出て行ってもいい季節。


 春が来たのだ。


「もうすぐ飛んでいけるね」


 誰かが言う。


 空を舞うというのはどういう気持ちなのだろう。

 春の訪れを知らせる、お日様を思わせるその色で、空を染める。


「今年もみんなたくさん飛べるね」

「たくさんたくさん、みんなで飛べるね」


 誰かが楽しそうに言う。

 春は芽吹きの季節。

 そして、新たな命の可能性を求めて、花開く季節だ。


 風が吹く。

 強い風は、しかしやはり冬の気配のそれではない。

 寒い寒い冬の色の風ではなく、春を告げるどこか優しい、暖かさを含んだ風。


 こういう風こそ、自分たちには相応しい。


「さあ、いこう、みんな」


 ひときわ強く吹き抜けた風に、乗る。

 空が一瞬、美しい黄色に彩られた。


 まるで黄色い花弁はなびらが空を舞うように。

 彼らもまた、空へと解き放たれたのである。



 ◇ ◇ ◇



 その日、天気予報は一斉に、この春初めての花粉飛散情報が出たことを報じていた。





――――――――――――――――――――――――――――――――

ごめんなさいごめんなさい。

唐突に思いついたんです。

ある意味ホラーだよなぁ、と思ってしまったら書き上げてました(ぉ

花粉症の人たち(相方含む)は本当にこの時期大変そうですよね……。

はい、私は花粉症はないんです。

なんか上司には「現代人じゃない」とか言われましたがΣ( ̄∇ ̄;

花粉症の皆様、対策はとにかくマスクとメガネかと。

頑張って乗り切ってください……。


ちなみに花粉で空が黄色くなるのは見たことがあります。

大学に在学中、敷地内に杉林があって……マジで黄色い花びらで空が覆われたようになってました。

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