第6話 優しい彼女

 約1時間後、礼子が来た。部屋のチャイムが鳴ったのだ。僕は居間にいて叫んだ。「礼子かー? 入っていいぞー!」「はーい!」 彼女は笑みを浮かべながら入ってきた。「よう! 久しぶり」「久しぶりね! 元気にしてた?」 礼子は相変わらずスタイルがいい。ムズムズしてくる。


 ピンクのコートを着ていて、ベージュのチノパンを履いている。かわいい。自慢の彼女だ。「ああ、元気だよ。礼子は?」


「私も元気よ! それにしても寒いねー、厚手のコート着てきたわ」「ホント、寒いな。風邪引くなよ」 彼女は、「これ、買ってきた」 買い物袋の中を覗いてみると、350mlの6缶パックのビールと、オレンジジュースとアップルジュースが1本ずつ。入っていた。「それとカレーライス作ろうと思って、具材も買ってきたよ」 何て気の利く彼女だろう。惚れ直した。そう伝えると、「ホント? 嬉しい! がんばって作るよ」「ありがとう」


「礼子が買ってきたビール呑んでからでもいいぞ? カレー作ってくれるのは」「そう? じゃあ、1本だけ呑むね」「うん、呑めのめ」 礼子は戸棚から小さめのグラスを1個取り、それに注いだ。 僕は、「乾杯だ」 と、言いグラス同士を軽くぶつけた。カチンといい音がした。


「最近どう?」 礼子を笑顔でこちらを見たので、僕も思わず笑みを浮かべた。彼女の笑顔を見ていると嬉しくなる。幸せな気持ちだ。こういう女性と出会うとは思わなかった。付き合って約半年が経つ。元カノとは全く違う。礼子は人柄もよく、気配りができる。僕はこういう女性と出会ったことはない。「仕事のことか?」 僕は質問を質問で返した。「それも含めて日常生活のこと」「そうだな、仕事は大変だけど、何とかやってるよ。普段の生活もそれなりに過ごしているよ。1つ思うのは僕が料理好きだったらなぁと思う」「何でそう思うの?」「毎日、コンビニ弁当じゃ飽きた」 礼子は、「んー」、とうなっている。どうしたのだろう。そして話しだした。「私が作りに来てもいいけれど、毎日じゃ大変だしね」「まあ、確かに。ありがたい話しだけどな」 僕は笑みを浮かべながら、「週に1回くらいでもいいよ。それだけでも助かる」「ホント? それならできるよ。そのかわり次の日私が休みの日でもいいでしょ?」「もちろんだよ。メニューは任せる。あと、具材の代金は払うから」 僕はそう言うと、「うん、そこはお願い。でも、私も食べる時はいらないよ」 と言った。「いいのか? 半分出すよ」「そんなに細かく考えなくてもいいよ」 そう言われて思わず笑ってしまった。「作りに来る時はメールするから」「わかった、よろしくな」 そう言って話はまとまった。何て優しい彼女なんだろう。素晴らしいな。 因みに今日のカレーライスの代金はいらないという。


                                 つづく……

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