第5話 彼女の不安

 僕の彼女の広岡礼子には内緒にしていることがある。それは、元カノの貝塚麗奈からメールや電話がきていて、それを平さんに解決してもらったこと。  打ち明けたらまずいだろうか? これも平さんに相談してみよう。元カノから連絡がくることを礼子が知れば気分もよくないだろう。


 今日は日曜日で時刻は14時20分頃。保険会社の営業マンである僕は、土曜、日曜、祝日が休み。だから、明日から仕事。正直、面倒。でも、そんなこと言えるわけもなく。


 平さんは水泳の指導員をしていて、不定休。だから、いつ休みなのか分からない。メールはしておこう。<こんにちは。昨日はありがとうございました。おかげで麗奈からはメールや電話はこなくなりました。ただ、思うことがあって、彼女の礼子にこの事実を話してもいいでしょうかね? 気分を害さないかな?>


 メールが返ってきたのは18時30分過ぎ。僕は缶ビールを呑んでいた。因みに2本目。本文は、<大丈夫だろ、話しても。健も気になってるんだろ? モヤモヤしてるんだろ? それなら話して事実を知ってもらうべきだ> 僕は、なるほどと思ったのでメールを返した。<わかりました。礼子にも話します> メールはそこで終わった。早速、礼子に連絡しよう。


<礼子、ちょっと話したいことがあるから電話していいか?> 僕は彼女の今月のシフト表を持っている。今日は休みになっている。すると、すぐにメールがきた。<うん、いいよ> 僕はすぐに電話をかけた。2回目の呼び出し音で繋がった。「もしもし」『健、どうしたの?』 早速、本題に入った。「実はさ、元カノからメールや電話がきて困っていたんだ。新しい彼女ができたと言ってもお構いなしで」 礼子は黙って聴いているようだ。「それで、どうしたらいいものかと思い、平さんに相談したんだ。そしたら着信拒否を設定してくれたんだ。それで解決したのさ」 ようやく相槌を打ってくれた。『うんうん』 僕は続けて話した。「この事実を礼子に話したくてもやもやしていたんだ。知って欲しくて」 礼子は話しだした。『なるほどね。解決したならよかった。健の話を聞いている間、私、不安になった。でも、不安になるような出来事じゃなくてよかった』 礼子は疑問になることを言ったので訊いてみた。「不安になるようなこと?」『うん、元カノと寄りを戻すから別れてくれないか、という話し』「まさか、そんなことはあるわけない。僕は礼子一筋だから」『そっか、ありがとう』「今から来ないか? 最近、会ってなかったから会いたくて」『そうね、行くわ。もう、呑んでるの?』「うん、呑んでるよ。まだ、2本目だけど」『泊まっていい? 明日、私休みだからさ』「うん、いいよ。僕は仕事だけど」『用意できたら行くね』「わかった待ってる」 電話はそれで終わった。久しぶりに礼子に会える。楽しみだ。


                                 つづく……

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