第4話 スマートフォンとパソコン

 僕は、平さんがスマートフォンを弄っている様子をジッと見ていた。何が何だか分からない。

「元カノは何て言う名前だ?」

 彼が訊いてきた。

「貝塚麗奈ですけど、何で名前を訊くんですか?」

 僕にとっては不思議なことだった。

「元カノの電話番号と、メールアドレスを知りたいからだ」

 なるほど! 

「それを入力して、こないようにするんですね?」

 平さんは頷きながら、

「そうだ」

 と、答えた。なるほど、理屈は分かった。後は、実際自分で操作してみれば覚えるだろう。


 平さんは5分くらいで設定した。早いのかどうなのかは分からないが。彼は言った。

「これでメールや電話はこないはずだ」

 得意気な顔の平さん。

「ありがとうございます!」

「いやいや、何のこれしき」

「僕はこういう機械に疎うとくて。パソコンなんて論外ですよ」

 彼は呆れたような表情で、

「今の時代パソコンくらいできないとだめだぞ。教えてやろうか?」

 僕はこれはチャンスかも! と思い、

「いいんですか? じゃあ、パソコン買わないと」

 平さんは、

「まずは中古のパソコンでいいと思うぞ。慣れたら新品を買えばいい」

 僕は、

「そういうものですか。何か車みたいですね」

 そう言うと彼は大笑いした。

「確かにそうだな」

「今月の給料日に買いますよ。ネットでいいですか?」

「そうだな。2、3万で買えるはずだから」

「わかりました」


 僕は彼女の広岡礼子にメールを打った。

<僕、平さんの勧めで中古のパソコン買うことにした。今時、パソコンくらいできないとだめだと言われて。教えてもらうことにした>

 今、礼子は仕事をしているだろう。報告までに送ったメールだから遅くなってもいい。見てくれさえすれば。時刻は13時45分頃。用事は済んだ。特にすることもないから帰ろうかな。礼子とのメールのやり取りを平さんに見られたくないし。メールは1人でいる時にしたい。


 帰宅してから小腹が空いたのでカップラーメンを食べるためにやかんに水を注いだ。そして、ガスの火を点けた。大きめの醤油味のカップ麺だ。前に買って食べた時、美味しかったからまた買った。因みに3つ購入した。味は3種類に分けた。醤油・味噌・塩という具合に。今、思いついたのは、カップ焼きそばも食べたいと思った。今日、後で買い物に行くから、その時買うことにした。


 カップ麺の口を開け、粉末スープを入れた。その時、メールがきた。もしかして、麗奈か? と怯えた。さっき設定してもらったのにと思いながら見た。相手は礼子だ。あー、よかった! 一安心。内容は、

<そうなんだ。よかったじゃん。私も教えられるから訊いてね>

 僕はすぐにメールを送った。

<わかった。ありがとう。今、休憩?>

 礼子もすぐにメールを返してくれた。

<いや、お客さんが見えないバックにいる。休憩は終わったよ>

 そうなんだと、仕事中ならあまりメールしちゃまずいな、と思い今は控えることにした。


  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る