母が娘に聞かせた話

女の子が言いました。

「ねえ、ママ、何かお話してよ。私、今日はお話聞かないと寝ないからね。」


母親が朗らかな顔で話しました。

「あら。そうね。この村であった話でもしましょうか。」


・・・・・・・


昔、風光明媚な小さな村に、生き生きとした好奇心を持つ少女エイラがいました。


彼女には、ロスという名の幼なじみがおり、彼は村の腕利き剣士のもとで剣術を学んでいました。

エイラはある日、ロスが剣士から剣の教えを受けているのを見て、その姿に興味を持ちます。


「剣には、持ち主の心が宿るのだ」と、剣士はロスに教えます。そして、剣を通じて感情を表現することの重要性を、優しく語りかけました。言葉を聞きながら、ロスは真剣に頷いていました。剣術に対する情熱が窺い知れます。


エイラの中でも冒険への炎が灯り、彼女は剣を振るうことへの憧れを募らせました。「私も剣を学びたいの!」と彼女は剣士に強く願い出ます。剣士はエイラに基本的な姿勢と剣の振り方を教え始め、彼女はその天賦の才を見せつけます。流れるような剣筋に、剣士もロスも思わず息をのみました。次第に、エイラは剣術の世界に夢中になっていきました。


エイラの技術は日に日に磨かれ、ある日、ロスとの模擬戦では彼女が勝利を収めました。

しかし、その結果、エイラは勝利の甘美さと同時に剣術への情熱を見失うような複雑な感情に苛まれました。やがて、彼女は稽古をやめてしまいました。


一方、ロスはその敗北を認め、さらなる努力を積み重ねました。


時が流れ、村に突然賊が現れた日、エイラは勇気を振り絞って剣を手に取りました。しかし、賊と対峙したとき、彼女の足は凍りつき、動けなくなってしまいました。


その危機的瞬間に、ロスが駆けつけ、賊を一掃しました。


エイラは自分の無力さを恥じましたが、ロスは彼女を救えたことに心からの喜びを感じました。「エイラ、これからも君を守っていくよ」と彼は優しく約束します。


エイラは元気を取り戻し、「ありがとう、ロス。でも、次は私があなたを守る番ね」と力強く返しました。


この出来事をきっかけに、エイラも再び剣の稽古を始めます。

彼女はロスの剣に宿る「勇気」を感じ取り、自分も同じような強さを持つ剣士になりたいと思いました。


時間が経つにつれ、エイラとロスは共に成長し、互いに力を与え合う存在となりました。


そして、彼らの物語は、まだ語られていない新たな冒険へと続いていくのです。


・・・・・・・


「え!?登場人物がパパとママの名前なんだけど!?」


居間で、くしゃみが聞こえる。


「似た名前が多いからねえ。この村」

「冒険て何?ふたりとも冒険してたの?何か、二人で遠いところによく旅行行ったみたいな話をしてたけど、あれって•••もしかして。」


居間で、くしゃみが聞こえる。


「結婚する前の旅行の話よ。はいはい。寝るわよ。」


納得していない顔の娘であったが、いつの間にか夢の世界に旅立っていた。


「さて、今日も剣を振ろうかしら。ね。」

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小さな話たち 有馬アキラ @hiro_aritomo

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