第28話 魔人族の子供
夕食を食べ終えた私とスカーレットは紅茶を飲みながら今後の話を始めた。
「カイリシャを討伐したことで、安心してルナティカへ行くことができるようになったということかしら?」
「そうですね。現時点での脅威はヴァルゴンですが、山賊になるようなタイプではないですし、どこかに潜伏中でしょうからしばらくは問題ないでしょう」
そう、ヴァルゴンだ。
スカーレットが言うように、プライドが高い男なので誰かを王に立てようとするか、準備万端で挙兵するように思える。
カイリシャは形に拘らないし、スピードを重視するタイプなので山賊を勢力下に置いたのだろう。
元四天王でもずいぶんと違うものだ。
「ルナティカでは具体的に何をすればいいの?」
「まずは村長のところに向かい、大魔道士ルナティカについて知っていることを聞いてください。書物や光魔法の後継者がいるようなら、その所在も確認してください」
「500年も前の人だけど、何か残っていると思う?」
「残っている可能性は高いと思います。大魔道士ルナティカは土地の改良を行うことで農業改革を行ったと言われています。そのような方であれば将来の飢饉に備えて何かを残しているような気がするのです」
「スカーレットがそう言うなら安心ね。久しぶりにルナティカへ戻るし、実はちょっと楽しみなのよ」
「実は、ついでにお願いしたいことがあるのです。ルナティカの東にグリーンヘイヴンという魔人族の村があるのですが、その村民から陳情が来ているのです」
スカーレットが少し困った顔をした。
魔人族の村ということは、王国の支配地域ではないはずだ。
「魔人族……?支配地域ではないのに陳情が来ているの?」
「はい。それが差出人はカイルという子供で、双子の妹を助けてほしいとのことです。それ以外は何も分からないので様子を見てきてほしいのです」
差出人が本当に子供だとしたら、支配地域がよく分かっていないということはありそうだ。
妹を助けたいだなんて、優しい子なんだろうか。
まあ、スカーレットのことだから理由は別にあるのだろうけども。
「あわよくば、魔人族の村を味方につけたいとか考えているのかしら」
「はい。ヴァルゴンとの戦いに備えて魔人族を味方に付けられたらと考えています」
ヴァルゴンは魔人族だ。
四天王筆頭となったのも、絶対的な能力の高さによるものだ。
魔人族は魔界の種族の中でも知力・体力・魔力ともにずば抜けているのだが、その一方で感情の理解が苦手なのでリーダーには向いていないとも言われている。
魔人族の家臣を少しでも増やすことができれば、様々な脅威へ対応できるようになるだろう。
「そうね。私も魔人族の家臣を増やしたいと思っていたところよ。今はリナリスだけだものね」
「魔人族に限ったことではなく、様々な種族と協力して魔界を守っていくことが大事です。食料危機の際にオーク族が人間界へ侵攻したことの反省もあります」
オーク族の人間界侵攻を調べてみたところ、他の部族に食料支援を断られていたことが判明している。
種族間の差別をどのように無くしていくか、難しい問題だが乗り越えなければならない問題だ。
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