第13話 勇者、再び魔界に現れる

 私とスカーレット、ゾルトの3人で即位の件を議論していたとき、絶望とも思える報告がもたらされた。


 人間界の勇者一行が再び現れ、王都へ向かっているというのだ。


 私は目の前が真っ暗になった。

 父上や兄上、親衛隊がいても敵わなかった相手に私たちが敵うだろうか。

 私の家臣はスカーレットとゾルト、マジェスティアから連れてきた20人の兵士だけなのだ。


「その勇者はセリオスですか?」


 スカーレットが冷静な口調で兵士に訪ねた。


「いえ、今回はレオニダス一行のようです」


 勇者レオニダスか……。

 人間界には複数の勇者がいる。

 父上を討ったのはセリオスだが、レオニダスはセリオスより強いと言われている。

 最悪の事態だ。


「やはり、レオニダスですか……。これはまさに、絶好の機会かもしれません」


 スカーレットはレオニダスだと確信していたのだろうか。

 どういうこと……チャンス?どう考えてもピンチじゃないの?


「どうしてレオニダスだと分かったの?」


「まず、セリオスには攻める理由が無いからです。陛下を倒し、英雄として帰還したのですから、しばらくはゆっくり休んで傷を癒やしたいはずです」

「一方で同じ勇者でも、陛下との戦いに加われなかったレオニダスは焦りを感じています。何か1つでも手柄を立てたいとか……そういうことでしょう」


 いや、さっぱり分からない。

 ピンチというのは変わらないじゃないか。


「スカーレット殿、拙者にも分からないのだが、レオニダスだと何故チャンスなのだ?」


「先ほども言ったように、レオニダスは手柄に飢えています。これが私たちの切り札です。レオニダスの手柄と引き換えに、魔界の再建に必要なものを手に入れるのです」


「そんなことが本当に可能なの?」


 もしこれが本当なら、素晴らしいことだ。

 経済、食糧、治安、王都の復興など、現状の問題は山積みで、解決の見込みがない。

 これで一挙に解決できるなんて、本当にうまくいくのだろうか……。


「はい。では説明します」


 私とゾルトはスカーレットの話を聞いた。

 それは……私が思いつきもしなかった、起死回生の一手だった。


「スカーレット……その案を採用します。早速、レオニダスを王都に迎えましょう」


 私はスカーレットの案を受け入れることとした。

 スカーレットの案というのは、魔界にとって都合のいい条件で降伏するというものだった。

 その結果、様々な問題を一挙に解決できると見込んでいる。


 そのためには、まずレオニダスを王都に迎える必要がある。

 私はすぐに『レオニダス一行には手を出さない』、『レオニダス一行には敬意を払う』という命令を下した。


「殿下、ここで一言申し上げたいことがあります」


「なんでしょう?」


「殿下は今後も様々な困難に直面することでしょう。しかし、チャンスというものは最初は困難に見えるものなのです。冷静かつ大胆に対処できれば、自然とチャンスに変わるでしょう」


「そういうものなのか?」


「はい、これからそのことを実感することになります。もしものことがあれば私がサポートしますので、ご安心して会談に臨んでください」


 こうして、私はレオニダスとの会談に臨むこととなった。

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