第12話 王都復興

 王都に到着した私たちは、想像をはるかに超えた破壊具合に呆然とした。

 路上には至るところに死体が転がっており、家を失った住民が路上で寝ているのであった。


「殿下、いかがいたしますか?」


 スカーレットが私を試すような口調で聞いてきた。


「即位の前に住民の暮らしを元に戻しましょう。王宮を住民に開放し、一時的な避難所にするとともに瓦礫の撤去と遺体の埋葬を行うのはどうかしら」


「素晴らしいと思います。先に即位をするなんて言おうものならゾルト殿に頼んでデコピンをしてもらうところでしたよ」


「頭に穴が空きそうね……」


 私は間違った答えをしなくて良かったと、ほっと胸をなでおろした。



 では王都の復興を開始しよう。

 瓦礫の撤去は一旦保留とし、住民の避難と死体の埋葬を先に行うこととした。


 住民の避難はスカーレットに任せ、ゾルトに遺体埋葬のために穴掘りを命じる。

 ゾルトの軍旗を掲げ、大声で掛け声を出していたところ、手が空いている住民が手伝ってくれたようだ。

 四天王が王都に戻ったことが、安心に繋がったのだろう。


 私は王宮に避難してきた住民に、炊き出しを行った。

 食料はマジェスティアから持ち出したものと、叔父上の馬車に積んでいたものを使うことにするが、半月程度はなんとか持ちそうだ。


「初日はとても順調でしたね。住民からも受け入れられているようですし、明日もこの調子でいきましょう」


 スカーレットは笑顔でそう言った。

 彼女が笑顔になることは滅多にないため、これは貴重な瞬間だ。

 予想以上にうまくできたのだろう。


「拙者が担当している穴掘りも順調です。ただ、今後のことを考えると兵士が足りませんね」


「兵士に限らず、家臣を増やしたいところだけどお金が足りないわね……。当面はボランティアに頼りつつ、有能な人材は身分を問わずに登用しましょう」


 私の家臣といえば、スカーレットとゾルトだけだ。

 やることはたくさんあるため、もっと人材がほしいところだ。


 とはいえ、やはりお金が不足しているのが問題だ。

 当面の費用はなんとかなるとして、雇用すれば継続して給料が発生するからだ。

 せっかく雇用したのに、給料が払えなくて解雇するなんてことは避けたい。


「殿下、即位の件ですが、埋葬が一段落した頃としましょう。住民の雰囲気を見ると殿下の即位に反対する者は少なそうなので、今のタイミングは逃さない方が良いと判断します」


「拙者も同意見です。カイリシャの件など不安もありますが、先送りすれば必ず解決できるような問題でもありませんから、対立候補のいないうちに即位しましょう」


「そうか、2人の意見を踏まえ、埋葬が一段落した後としましょう。タイミングについては、スカーレットに任せます」


 魔王か……正直なところ、まだ実感が湧かないのだが、そんなことを言っている場合ではないのだろう。

 セリアナのような悲劇をもう繰り返さないためにも、私が変えなければならないのだ。



 そんなことを考えているときに限って、問題は起こるものなのかもしれない。

 今まで山賊や叔父上に何度も襲撃を受けてきたのだが、今回は別格だ。


 そう、勇者一行が再び侵攻を開始したという報が届いたのだ。

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