第二十六話 叔父
検査で異常がないと確認されたため、数日後に自分は無事退院した。そして今日は目覚めてから一週間経過したらしい。だいぶ身体も回復しているため、明日から仕事に復帰する。しかし定休日である水曜日に店長は、もとい叔父は、勤務先兼自宅のバーに自分を呼び出した。どうやら自分が退院したため、約束通り様々な質問に答えてくれるらしい。
現在時刻は昼の十二時。セミが鳴く場所から、涼しい空間に向かってドアを開ける。
「フジサワくんっ! 待っていたよ~、さあ座って。バイトの面接以来じゃない? ここから入るのは。」
叔父さんが手を振りながら、カウンター越しにいるのが見えた。自分は歩いて、カウンター席に座って言った。
「あの時は衝撃でしたよ。たまに会っていたとはいえ、自分の叔父がバーの店長ということを知ったときは驚きました。
それにしても、今は勤務時間ではないです。自分は名前を呼ばれるのはもう嫌じゃないよ、叔父さん。」
「それもそうだね~、真優くん。そして、何が聞きたいんだっけ? 昼時にする話じゃないかもしれないけどね。」
確かにその通りだ。だけど、聞きたいという気持ちが勝っている。
「十五年前、あなたが旅行に行っていたということは義父から軽く聞いてた。その間に事件が起こったということも。そして、あなたが急遽戻って来たときには恐らく、自分は記憶がなく安静にせねばならない状況に陥っていた。気付いた時には母と共に暮らせないということになり、自分は義両親に育てられた。それからは両親と一切連絡を取っていない。現在両親がどこにいるかも分からないし、義両親がどうして自分を育ててくれることになったのかすら知らない。
今、自分が話を聞くことができるのは叔父さん、あなたしかいないんだ。両親がどうなったのかということと、どうして義両親が自分を引き取ってくれたのか、……どうか教えて下さい。」
少しの沈黙が過ぎていったが、暫くして叔父さんは口を開いた。
「分かった。じゃあここからは真面目に話すことにしようか。」
その時の表情は、今までに見たことがないくらいに真剣だった。
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