第十七話 誘拐

 ここは……ウヌプラス? ちょうどからくり時計が見える。時間は、もうすぐ午後一時のようだ。しかし、走馬灯を今更見るだろうか?

 いや、遠くから見覚えのある少女と女性が来る。ということは……これはいったい何なのだろう?


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 音楽が鳴り始め、少女はからくり時計の方へ母の手を繋いで走ろうとしていた。

「おかあさん、みにいきたい! いこう!」

 いつも来ると見に行くのが恒例であるようだ。しかし少女の母は現在体調が悪いようで、走ることが出来ないみたいだ。

「ごめんねエミ、今お母さんはお腹が痛いの。時計もすぐそこだし、一人で見に行ってね。お母さんは広場の横のトイレに行ってくるから、見終わったら来てね。出来る?」

 母は少女に優しい口調で話した。

「うん、できるよ! 行ってくるね!」

 そう言うと少女はからくり時計の方へ向かい、母はお手洗いに向かった。


「わあ……すごい……」

 少女はからくり時計に見惚れていた。明るい音楽に、森で人形たちが仲良く踊っている仕掛け。そして、キラキラと輝く光。何十回見ても、そのからくり時計は心を掴んで離さなかった。少女の様子からして、それは明らかだった。

 そして、そろそろ仕掛けも終わりを迎える頃。

「お嬢ちゃん、一人?」

 長い髪の大人が、少女に話しかけた。残念ながら、顔は角度的に見えない。

「うん。おかあさんのところにもう少しでいくよていなの。でも、トイレってどこだっけ……」

「トイレ、ここの近くに二つあるもんね。おばさんも行きたかったから、行こう。」

「ほんと? ありがとう!」

 こうして少女とお手洗いに向かった。しかし、歩いていた少女は中を見て、

「だれもいない……」

と言った。そう、母親はもう一つの方に行ってたのだ。

「そっか、後でもう一つの方に行こう。でもその前に、このハンカチの匂い嗅いでからでもいいんじゃないかな?いいにおいするよ!」

「え! どんなにおい?」

 少女が振り向くと、長い髪の大人は少女の顎を殴り気絶させたのだ。すぐに、倒れないよう少女を支えてからおんぶをし、気絶している少女とともにその場を後にした。

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 自分の見た場面は、一旦そこで途切れていた。

 …つくづく意味不明な大人であった。

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