第十四話 帰路
笑顔の母と娘。を見守る、成人男性二人。この構図はきっと、異様な光景に見えているかもしれない。しかし、周りには歩いている人は少ない。それもそのはず、ここは住宅街である。歩いているのは住民と思しき人々のみ。だからこそ異様さが目立ってしまうかもしれないが、まあ気にしないでおこう。
「ねえねえフジサワさん!」
「ああ! うん、どうしたの?」
自分がぼーっとしていたことと親子で手をつなぎ仲良く話して歩いていたのもあって、急にエミちゃんに話しかけられて驚いた。
「おゆうはん、いっしょにたべませんか?」
「えっ……⁉」
思わず立ち止まってしまう。このような展開は想像していなかった。まあ、帰ることができない世界線は想定していたが、夕飯にありつけるとは思っていなかった。というかこれが物語の世界なら普通、からくり時計のあたりでタイムスリップの何かがあって元の世界に戻って平和に完結! とかありそうだけど、戻ってないんだよな自分。何なら夜どうするかとか今の今まで忘れていた。
「おかあさんがていあんしてくれたの。良かったらどうですか?」
ぐっ……、笑顔が眩しい。四歳児含めた三人暮らしと聞いていたのに多く買っているな、どうなんだろうこれが普通なのか、とか考えていた。そういうことか!ウヌプラスの食品売り場で買い物をしてからゆっくり帰っているから結構時間経過してるもんなあ。
とか考えて丁度よく近くの公園にあった時計を見ると、あと十分ほどで十八時になりそうだった。
「では、お言葉に甘えて。お世話になります。」
「わーい! おかあさん、今日はフジサワさんといっぱい いっしょにいられてわたしうれしい!」
「良かったねエミ。フジサワさん、気にせずたくさん食べてくださいね。」
「はい。ありがとうございます。」
再び歩き始める。一緒にいた私服警官は終始笑顔で見守っていたようだった。
それは良いが、道はずっと既視感のある場所を進んでいた。何だろう、嫌な予感がする。
「ついた! ここがわたしのおうちです! まえにひっこしてきたばかりのおうちなの。」
えっ……嘘だ……
着いた場所は一棟のマンション。そこは、かつて暮らしていた場所だった。でも予感はこれじゃない。一体何なんだろう───
すると、背後から女性の声がした。
「あんた、何でここにいるの?」
振り向くとそこには、ちょうど帰宅してきたであろう自分の母親と、かつての自分がいた。
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