真実

第九話 聴取

 警察に事情聴取されることになり、ウヌプラスの事務所的な所に連れていかれた。二階の人気ひとけの少ない場所に位置し、あからさまに「関係者以外立ち入り禁止」というような感じだ。(実際、「関係者以外立ち入り禁止」の貼り紙があった。)怒鳴られるような空気は無いが、机や座っている椅子などはドラマの事情聴取で出てくるものと似ていた。エミちゃんや高校生たちも連行され、別室で聴取されるらしい。


 目の前には男性の私服警官。異様な雰囲気と温度が高い部屋に緊張し、喉が渇いてきた。ダメ元で思わず聞いてみる。

「すみません、まずは持参したお茶を飲んで大丈夫でしょうか……?」

「はあ……。ダメです」

「え、あ、はいすみませ──」

「冷えた麦茶があるので、よろしければ飲んでください。熱中症で倒れられては困りますからね」

 警官はそう言うと、クーラーボックスからペットボトルを取り出して渡してくれた。一周回って優しそうな回答とこの部屋のクーラーボックス常備に驚いたが、ここでは気にしてはいけないと思ってしまった。とりあえず蓋を開け、冷たいお茶を飲んだ。お茶が喉を通るとともに、警官が口を開いた。

「飲みながらでいいので聞いてください。高校生たちやエミさんの様子から、あなたは悪い人ではない可能性を感じました。しかし、あからさまに怪しいのも事実です」

 言われてみればそうかもしれない。黒いマスクなんて平成の日本にしていたら、明らかに怪しい人確定ルートだ。


「そのため、予定していた質問を変えます。あなたは一体、何者なんですか?」


 どう答えるのが正解だろう、正直に話して信じてくれるだろうか。


「あのですね、まずはあなたが何者か分からないんです。身分証、見せてもらえます?」

 令和の身分証なんて見せても信じてくれやしないだろう。とりあえず提示するために財布を取りだし、免許証と保険証を手渡した。

「ありがとうございます。えーと、フジサワさん、ですね。ん? なにこれ本物? よく似た偽物のようなつくりをしてますね。いや、令和ってなんですか? 元号ですか? 次の元号これ? よく分かんないけどダメですよこんな偽物をもってもらっちゃあ。」

 ですよね、そうですよね。でもそれ本物なんです。十五年後にあなた達も使ってるやつです。信じてくれなさそうだけど。

「じゃあ、あなたが未来人である証拠、提示してください。かつあなたが誘拐していない証言が取れたら、あなたのことを信じます。」

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る