第八話 霹靂
「コンクール関係なしに、お二人の写真を撮って良いですか? チェキなのですぐに現像できますし。」
え??
「とりたい! フジサワさん、とろ?」
「……ああ、じゃあせっかくなので……。」
やはり高校生のパワーには負けてしまう。断れない。
「ありがとうございます! じゃあ撮りますよー、ポーズしてください!」
スッ……。
エミちゃんもか。ポーズは二人ともピースとか、これは時代なのか? 十五年後とかエミちゃんもギャルピースとかするようになるのかな? うぐ、なんかもう親の気分になってきた。
「親御さん、せっかくなんでマスク外してください!」
「え、あ、はい!」
後輩の子に言われて急いでマスクを外す。あ、やっぱりこの方が涼しい。
「いきますよぉー、三、二、一、」
「撮れましたよー! ありがとうございました、マスクもうつけて大丈夫ですよ。風邪ひいてるのに申し訳ありません。」
「いや風邪はひいてなくて……。え、時間少しかかりませんでした?」
マスクをつけながら聞いた。チェキには少し時間が掛かっているようだった。
「はい、でもすぐにお渡し出来ますよ。それに、」
振り向いて、後輩の子が先輩たちを指さした。
「はあ、かわいい……。」
「俺らもチェキ持ってきてて良かったなあ……。」
「私のやつ小笠原との共用にするから、それ渡してきて……。」
「分かった……。」
「……先輩方も撮ってたみたいなので、エミちゃんと親御さんにお渡しできますよ。今、可愛さにやられてますけど。」
この子達良い意味でクセが強いな、関わっていたい。面白くていいなあ。
少しして先輩たちは正気に戻り、部長さんがチェキを手渡してくれた。
「こちらになります。あまり変わらない感じなのでお二人でお好きな方をお選び下さい。本日は本当にありがとうございました!」
「「ありがとうございました!」」
写真部の三人がお辞儀をする。丁寧で本当にいい子たちだ。それを思うのと並行して、エミちゃんが写真をこれにする! と取り、自分自身はもう一つの方を貰って財布に入れた。
「いい写真が撮れました。せっかくなのでお礼をしたいのですが…。」
「いえ、大丈夫ですので──」
次の瞬間だった。
「エミ‼」
「おかあ、さん…? おかあさん!」
エミちゃんのお母さんが駆け寄り、エミちゃんを抱きしめた。エミちゃんは、涙を流していた。
「エミ! 無事でよかった!」
「おかあさん、はぐれてごめんなさい…!」
一方真横では。
「え? あなた親御さんじゃないんですか?」
男子生徒に聞かれ、事情を話そうとした。
「あ、その実は、迷子になっていたエミちゃんを──」
親子の再会は、和やかな雰囲気が漂う…はずだった。
「あなたが大町エミさんを、誘拐したんですか?」
背後から声がして、振り向いた。
「少し、事情聴取させていただけませんか?」
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