第六話 学生

 真実はまあ、後で警官が来た時にでもはっきりするだろう。誘拐犯とは思われたくないけれども、今は歩いていくしかない。


 エミちゃんとしばらく歩いていると、高校生たちが校舎から出ていっているのに気付いた。そうか、今日は、ええと、何曜日だっけ。ずれてるから分かんないな。まあこの感じだと平日だろうし、ちょうど終業式なのかもしれない。あ、でもグラウンドで部活してる学生もいる。

 夏休みか、良いなあ。あの制服、青春だなあ。母校じゃないけど。

 そういえば十五年前って何歳だ? ええと、小学五年生か。その時に夏休みってどんなことが、ああ……。あの辺りか。ってことはもしかして──


「あのー、すみません……」

声を掛けられて前を見ると、高校生三人組が立っていた。見る感じだと、女子高生二人と男子高校生一人のようであった。三人とも指定カバンを所持しており、真ん中の女子高生は一眼レフを首から下げている。

「はい、どうしたんですか?」

 問いかけると、高校生たちはこう答えた。

「私たち、ここの高校の、イチリツ中央の写真部なんですが……」

「お写真、撮らせてもらってもよろしいですか? 無理なら別に大丈夫です!!」

「なんだか、素敵な雰囲気の親子だなあと思いまして。」

 え??? 親子???? そう見える??

 まあ、誘拐犯よりは良い。安全。あの、なんて言ったらいいのか。別に親子が嫌なんじゃなくて、こう……

 自分が結婚しててもおかしくない年齢ってことがショックすぎる……!

 高校を卒業して進学した専門学校時代には二回告白された。一人は他学科、しかも罰ゲームでときた。それを知ったときには本当に頭に来たからこちらから振った。この年でするのかよ、とも思ったし。数か月後に告白してきたもう一人は三か月で浮気されたから、あ、こっちも振ったか。もうこうなると何も信じなくなるから、結婚どころかそんなこともしたことが無い。バーでは愚痴をよく聞くから相談は慣れているけど、自分が該当者? とは?? となってしまい早五年、昔の同級生も結婚してきてるから客観的なショックは無いけど、自分が……。うわあ。まあ、それだけが理由ではないんだけど。


 ってあれ、エミちゃんが高校生と仲良くおしゃべりしてる。


「エミちゃんの親御さん、かっこいいね!」

「こんなかっこいい人になりてえ……」

「私もはやエミちゃんの親御さんと結婚したいです」

「「お前それは言い過ぎ」」

「先輩方ひどい! でもエミちゃん、あの人のこと大好きでしょ?」

「うん! フジサワさんやさしくてすき!」

「「「天使っ!!!!!!!!!!」」」

 エミちゃんが、高校生らに、ハグされてる。若いって素晴らしいなあ。

まあ、この高校生たち現実では年上なんだけど。

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