第五話 疑問

 とは言え、あそこからウヌプラスまでは子どもの足だと遠く感じるような距離である。どうしてあんな所にいたんだろう。とりあえず、コンビニを後にして少しずつでも歩きながら聞いていこう。

 そうしてウヌプラスに向かってエミちゃんと進んでいき、歩きながら聞いた。

「ねえ、どうやってあそこに行ったか覚えてる?」

 明らかにこんな小さい子ども一人で行ったとは考えにくい。なら、どのようにはぐれたかは知りたいものではある。

「なんかね、知らないおばさんにひっぱられて、いつのまにか一人になってたの……。」

「え? ちょ、え……?」

 まさかの“迷子”ではなく“誘拐”⁉ 迷子の方がまだ良かった。誘拐されたことがあるとかリアルで初めて聞いた。てか、さっきはお母さん探していつのまにか、とか言ってたよな? 先程の情報を加えると一気に混乱してきた。これはもう少し聞く必要があるかもしれない。

「詳しく聞いても良いかな?」

 するとエミちゃんは頷き、教えてくれた。

「おともお人形さんたちもすごいやつね、わたしだいすきなの。」

 ああ、あれか。吹き抜け広場にあるやつ。あの建物の配置は大体分かる。

「からくり時計、のことかな?」

「たぶん。おかあさんがそう言ってたきがする。それをね、行くといつもみるんだけど、おかあさんがそのときおなかがいたくていっしょにみれなくて…。」

 確かに、四歳くらいなら初めてのおつかいをしてもおかしくない時期だ。目を離すのは少し良くないかもしれないが、いつも行く場所、何ならすぐ近くにお手洗いがあるなら離してしまうのも納得はいく。

「ひとりでみてたら知らないおばさんにはなしかけられて、わたしトイレのばしょもおぼえてなくて、おばさんの方をむいたら気づいたらねてて、あそこにいたの……。」

「寝てた……?」

「このにおいかいでみて、って言われて…」

 聞く限りクロロホルムか? もしそうだとしても実際に本当に使うとか聞いたことないからなあ……。となるとただの香水入りで、それで何やかんやで眠って……?

 謎が多い。今日は本当に色々ありすぎる。そしてきっと、話を聞いただけでは事実と異なる部分もあるかもしれないことを予測しよう。

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