第26話 武器屋魂

一見すると、誰しもが赤い目と青い瞳をしている村。

多分種族同士の集まったと言うものだろう。

一種の種族しかいない村だ。


俺らは、宿屋を探しにジリスの村に来た。


「ようこそ!僕たちの村へ!」


ジリスが手を広げた先にあったのは、森に包まれた森林の中の木を切り倒して創設されたような村。


「マイクラに出てきそうな村だなぁ…」


歩道は少し整備されているようで、道は土を少し平らにした程度の簡単な舗装しかされていなかったがその分、小石一つも見つからないほどに、細かく整備されているようだ。


「それじゃあ、村を案内するよ!」


元気よく案内を始めるジリスは目が輝いているように見える。

まるで、夏休みに虫取りを始めるような輝かしい目をした少年のように。


「ちなみに、なんで村を案内してくれるんだ?」


「実はさ…」


「実は?」


俺とフウシはジリスの両眼を見て聞き返す。


「実はここの村、僕と同い年の人が、一人しかいなくて…」


「一人?つまり、少子化ってわけか?」


「ど、どちらかというと、単に僕と近い年齢の人がいなくて…いたとしても、この村を出て商売をしている、デコン兄か…それか、今は赤ちゃんのアルちゃんとか、だけかな…」


「ズバリ!近い年齢の人がいない!と言うことでしょう!!」


指をジリスに向かって伸ばし、決めポーズをするフウシを無視し、俺は話を続ける。


「要するに、話の合うやつがいないわけか。」


わかるな。俺もフウシが出会わなければ、本当に学校では孤立していたかもしれない。そう思うと、ジリスの気持ちが少しだけわかる気がする。


「おお!ジリス帰ったか!」


俺らがそんな、ジリスの身の上話を聞いていると、俺らに…というかジリスに声をかけてきたのは、白く長い髭を生やした、ゴーグルをした腰の曲がったおじいさんだった。


「あ、ただいま!ボンレス爺さん!」


ボンレス爺さんと呼ばれた老人は、付けていたゴーグルを外し、ジリスの顔をじっと見る。ゴーグルの奥にあった目はとても、切れ味のある瞳で、細目ながらも、瞳の奥は、淡い青色の深みのある瞳だった。


そのおじいさんは、ニッ!と笑った。

「何か、新しい鉱石は手に入れられたか?よかったらまた買い取ってやろうと思ったのじゃが。」


「鉱石?ああ、今回は、あんまり新しいのは取れなかったよ…でも、貴重な奴が取れたんだ!見てよこれ!」


そういうとジリスは、担いでいた大きなリュックを下ろして、その中から一つの石を取り出した。


石は、くすんだ緑色のガラスのような宝石を所々に身につけていて、何かの鉱石だと一眼でわかった。


「これは!!アンバライトじゃないか!!でかしたぞ!!ジリス!!!これを使えば、0級の装備も作れる!!」


「ほんと!?役に立ってくれて嬉しいな!!」


すると、腰の曲がったボンレスは、腰にぶら下げてあった革の袋を取り出す。


「それじゃあ、どれくらいで売ってくれんじゃ?早速買い取ってやろうと思うのじゃが」


「あー…じゃあ、無料タダであげるよ!」


ジリスがその言葉を口にすると、ボンレスは、細い目を大きくしながら、「んな!?無料タダじゃと!?」と大声を出した。


「その代わり、この人たちに武器を作ってくれない?」


「武器じゃと?」


ジリスが俺らのことを見ると、ボンレス爺さんは細い目をさらに細くして、俺らの目を見た。


「あ?俺ら?いいのか?初対面なのに」


「うん!全然いいよ!さっき見た感じ、その武器、粗悪品の奴?でしょ?どうせどっかのブランド品とかでしょ?」


「フウシのって、確か」


「え?一応、国で引き継がれた剣とは違う奴だよ?最近人気のテルドロームってところの最高級品。前の街で買ったんだ。」


ボンレス爺さんは、少しニヤリと笑うと、鼻息を漏らした。


「テルドローム…ねぇ…」


「何か、あるのか?爺さん」


「テルドロームだろ?知ってるさ。最近、冒険者の間で流行ってるんだろ?なんか、魔法の威力を高めたり、移動速度を上げたりとかで。」


「え?ああ、確か、この剣の保持者には、特別な力が宿るってやつだったな。確か、魔力増幅とか、移動速度上昇とか、魔法の威力増幅とか。」


ボンレス爺さんは、「はあ」と深いため息を吐くと、続けて言った。


「何回も、テルドローム、テルドロームって聞いてきたんじゃがね、ワシにはアレの良さが全くわからんな。」


「え?ボンレス爺さん…テルドロームは前凄い品だって言ってなかったけ?」


「ああ?あれか?あれは、ブランドの伸びとしてじゃ。作られた剣が凄いなんて一言も言っとらんぞ?とにかく、テルドロームってとこの剣、そりゃあ粗悪品だ魔力増幅や、移動速度上昇、そんな効果は無い。他の連中は、魔力の流れが見えてないからわからないだろうが、ワシにはわかる。その剣、そこら辺の兵士が使っている剣となんの変わらんよ。」


「てことは、俺ら騙されたのか!?」


「いや、俺は剣使わないから買ってもないし、騙されてもないけどな。」


「というか、わしだったら、そんなボンクラよりも、もっと出来の良い剣作れるわい。」


そう言うと、ボンレス爺さんはすぐそばにある、レンガでできた家の扉を少し開けた。


「三日後じゃ。」


「え?」


「三日後の正午、ここの家に来い。そんな剣よりももっと出来のいい物を渡してやるわい。」


そう言うと、レンガの家の中に入り、鉄の扉を閉じた。


「え?あれで大丈夫なのか?」


「え?あ、うん…完全にボンレス爺さんの火がついちゃったみたいだね…」


「火?」


「そう…職人魂っていうか…なんというか…ボンレス爺さん武器屋なんだけど、なんか、一つの目標ができあがっちゃうと、ああやって誰も入れない扉の中に篭って、武器作りに没頭しちゃうんだよ…でも、三日後の正午には出てくると思うし、武器も出来上がると思うけど、どうする?三日後の正午まで泊まってく?」


「まぁ…せっかく作ってもらうんだし、待っておくかぁ…ヒスイもそれで良いよな?」


「え?まあ、良いけど…」


するとフウシは、ニカッと笑う。


「じゃ!そういうことで!」


俺たちはどうやらここで武器が出来上がるまで滞在することとなったらしい。

ま、そういうのも良いか。


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