第15話 魔王城の施設は有能らしいです

「そうか。銃が…」


「弾丸の先が丸まっていた。多分、拳銃か、小銃。そこら辺の銃がお前の腹に四

発ぶち込まれた。」


 客室の赤いベッドに俺は腰掛け、フウシはすぐ近くにあった椅子に腰掛けてい

た。


「それで、一応情報共有をしておこう。お前、これまでの何年間か、何があった

か…全部話してくれるか?」


「…わかった。」




「俺が生まれたのは、今から16年前。あの日は太陽がよく照った日だった。


 その日は俺が生まれたこともあって一日中賑やかで、宴のような物をしていた

んだ。


 あの日はみんなが楽しく賑わっていた。


 そして、調べていくうちに、俺は魔王の息子だとわかったんだ。


 魔王は優しく、RPGで討伐されるような感じの魔王ではなかった。


 それも、悪役貴族とか言う貴族の真反対のような優しさだった。


 みんな階級なんて気にしてなかったんだ。


 王も民も関係ない。国はみんなのものだ。みんなで一緒に背負っていこう。そ

れが父さんの口癖だった。




 平和の保たれた国は父さんが、通りかかると友人が家に来たかのような感覚で

父さんに話しかけていて、魔王の国なのに、ここが一番平和な国じゃないかと思

わせる位に日常は平和の保たれた国だった。




 でも8年前、ある日悲しい出来事が起きた。


 それは俺の両親の死だ。




 その年は国中から笑いが消えた。


 悲しみに包まれた魔王の国は、とても寂しい国となった。


 そこから一年が経つと、俺が新たに国王として、昇進した。




 みんなは俺が父さん達のようにできるのか心配していたけど、ちゃんとやってみ

せる。


 俺はそう言いながら天を仰いだんだ…」


 俺は少し間を置く。


「あ、お、おう…そうか…」


「そうだ!」


 俺は腰掛けていたベットから立ち上がり、窓の外を眺める。


「そういえば、フウシって、前世も親…死んでたよな…?」


 時計のお守りがコクリコクリと2かい揺られると、フウシは口を開く。


「ああ。母は俺を産んだら力尽きた。父はその衝撃に耐えられずに自殺。仕方な

いよ。」


「仕方ない…のか?」


「…とりあえずさ、相手にはアーサーとか言う敵がいるんでしょ?それも、多分

転生者。」


「ああ。どんな能力かは知らんけど、多分、強いんじゃないかな…?銃を作れるく

らいだし、もしかしたら、元軍人なんてこともあるかもしれないし」


「なるほどなぁ…俺らを狙ってるってことは、国が危ないかもしれないんだよ

な…警備を増やしとくか…」


 コンコン。二回の扉を叩く音がすると、扉の向こうから、「フウシ様?こちらに

ございますでしょうか?先日の被害報告があるのですが…」と声がした。


「ああ。わかった今すぐ行く。」


 フウシは椅子から立ち上がり、「じゃ、そうゆことで。」というと、部屋を出て

行った。




 はあ。


 俺はベットに寝っ転がり、考えことをしていた。




 相手のアーサー。多分本名とかではないだろうな。


 この世界にアーサー王伝説は存在してなかったっぽいし、もしかしたら、アー

サーを守っている連中、円卓の騎士とかも、転生者の線もある。


 アーサー…本当に何者なのかわからないやつだ。




 時計が時を刻む。


 現在は昼の3時半。インターネットもなければ、SNSもないこの世界は暇な時に

することが0といっても過言ではないな。


「そういえば、フウシが俺の事、VIP的な事を言ってたっけ?」


 確か、魔王城に隠されている色々な施設を利用できるとか言ってたよな?




 今の内に強くならなければ…




 俺はそう考えると、ベットから起き上がり、客室の扉から出た。






 魔王城には個人的に気になる施設がいくつかある。


 一つ目。


 食堂。


 もちろんだ。もちろん、魔王城の飯とはどの程度なのか、個人的に気になる

し、ここ最近はまともな食事をしていない。だから、フウシがどれくらい豪華な

物を食べているか個人的に気になるのだ。




 二つ目。


 地下。


 魔王城にも、立ち入ることは許されないらしいが、地下という存在があるよう

だ。


 地下。もしかしたら、不死の種族やモンスターがいるのかもしれない。楽しみ

でもあるが、これはゲームじゃないので、死んだらまた生き返るなんてことは無

い。なので、安易な気持ちで立ち入り禁止には入りたくないのだ。




 三つ目。そしてこれが本命だ。


 それは図書館。


 色々な文庫が揃い、歴史書やら、魔術書。さらには哲学の本や、雑学の本。武器

を専門に書かれている本など、多種多様な本がズラッと並んでいると、フウシから

は聞いた。




 今日はその図書館に行ってみようと思う。


 図書館は一般公開してあるらしく、色々な階級の人がいるらしいが…


「で、でっか…」


 俺は魔王城の真横にある扉を潜ると、20Mは高さのある本棚がずらりと並ぶ、

オレンジ色の光に満ちた図書館が現れる。


 天井は石が敷き詰められ、所々にランプが吊るされている。


 床は赤いリッチなカーペットが敷かれて、本棚は迷路のように、複雑に並ばれ

ている。




「すげえな…」


 早速俺は歩き始め、現実世界では見たことのない本を眺める。


 しばらく歩いた後、俺は足を止めた。


「え、えっと…魔術完全書…?」


 前半の2文字は違えど、現実世界でも、〇〇完全書という名前の物は非常に役に

立った覚えがある。


 小説の書き方完全書という本には何回救われてきたことか…


 俺はそれを手に取った。


 ページをペラペラとめくると、中には、いくつもの魔術陣のイラストと、説明

があり、とても見やすいものだった。


「一冊目か…」


 俺は上を見上げた。


 多分ここら辺は魔術に関することについて書かれている本が置かれている、じ

わば、魔術本コーナーだ。


 どうせなら、もう少し、本を読み漁りたいところだ。


 何かいい本はないのだろうか…


 てか…これってどうやって本棚の一番上にある本を取るのだろうか。


 と、俺がそんなことを気にし、キョロキョロとあたりを見ていると、一つのも

のが目に付いた。


「短縮梯子…?」


 俺は短縮梯子と書かれた、棒を持つと、そこに書かれている紙に目を下ろし

た。


 紙はどうやら説明書で、魔力を込めると、梯子になるのだとか。


「使ってみるか…」


 俺は魔力をただの棒に込めると、ただの棒はすぐに伸び始め、梯子になった。


「すごぉ…」


 俺は田舎者のような反応をすると、本棚に梯子を掛けて、梯子を登った。


 そして、俺は地面から6Mほど離れた場所に、魔術入門と書かれた本を見つけ

る。


「これも良さそうだな。」


 そして、その隣には、魔術の起源と書かれた本。両方とも気になる物だったの

で、俺はその本を手に取り、「これもだ。」というと、梯子から降りた。


 俺は貸出のための手続きを終えると、早速、魔王城の施設で気になっていたポ

イント四つ目の訓練場へと向かった。

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